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私のための異世界転生  作者: 桃栗パメロ
第一章 魔法使いは恋を知る
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022 竜を裂く日

書きました。最後まで読んでくださると幸いです。

500PV突破しました。いつも読んでくださりありがとうございます。

「そんな刃の折れた剣じゃやりにくくて仕方ないだろ。斬撃も最早脅威で無く、燃やそうとしたところで飛ばす炎も燃える体も簡単に避けられる。お前の勝ち目は無くなったわけだが……まだ戦るか?」


「勝ち目が無い……成程成程、随分大口を叩いたものだな!お前からしても倒しようが無い。わかっているだろう。」


 あいつの剣を叩き斬ってから何分か経ったか。もはやナイフ程の大きさになった、ガープスが持っていた剣を突き刺しにくるグレンをいなし続ける。

 このまま続けてたら空を羽ばたくホークに囲まれてやられるのが目に見えているし、何より右腕が滅茶苦茶痛い。関節の部分から血がだらだら流れている。何とか剣は持てているが……早いところ何とかやりようが無いか探りたいな。


「まあこっちも大暴れする手筈だったのに思わぬ妨害を喰らっている身だ。貴様の言うように休戦とし、ちょっと遠回りしてでも本命に向かうのも手か……。」


「それは、私がさせません!」


 背後から幾つもの光線が駆け抜けていき、グレンを撃ち抜く。振り向いたらマリが魔法陣を幾らか浮かべながらこちらに走ってきていた。


「あなた様、遅ればせながら援護に参りました……ってどうされたんですか!?右腕が、右腕がボロボロじゃないですか!」


 慌てながらマリが遠くの方に手を振ると、淡く緑に光る光弾が飛んでくる。避ける間もなく当たったら、右腕の傷が癒えてきた気が……しなくもないか?


「メフィ様の得意とする治癒魔法だそうです。光の大精霊様のご加護だそうで……私も治癒ができる魔法というのの存在は知っていましたが、この目で見たのは初めてでした。」


 治癒魔法を初めて見た?確かにここに来てから見聞きしなかったが、そんなに珍しいのか……。

 

「ほう、増援が来るかと思えばプリズマイトの一人娘か。それについさっきまで手負いだった奴が完治とは……。こりゃ、深追いは禁物かね。」

「どうせアレがあるんだ。ここの勝敗がどうであろうが大局は変わらねえしな。」


 余程マリの魔法が効いたのか、どうやらあっちは逃げるつもりみたいだ。みすみす逃すのも癪だが、こっちも攻めあぐねていたところだ。退いてくれるならありがたいな。


「ええーと、ライヤっつったな。貴様は見込みがある。もし貴様が更に強くなって再び自分の前に立ちはだかるならば、貴様を味方と認めよう!」


「……は?」


「まあ何はともあれアレを討伐できたのならという仮定の話にはなるな。少しだけ期待して待っているとしよう!」


 グレンはそう言い残し、くるりと反対側を向いて堂々と歩いて何処かへ行ってしまった。


「想像はしていましたが……来るんですね。」


「あれ…………まさかタナビ山の時の!」


 そして彼が去ると同時に、上空では巨大な……タナビ山で紫炎のバーニアが連れていたドラゴンが姿を表していた。


「あなた様、ここに駆けつけるまでに階段にて佳澄様とすれ違いました。なので……。」


「ああ、攻撃に専念できるな。」


 イメージするのは疾風、鎌鼬のような切り裂く風。剣に纏わせ、力を貯める。

 先のグレンと戦っていた時にも使っていたのだが、この魔剣、どうやら斬るその一つ一つに、四大属性の付与ができるみたいだ。火や水を纏うことができれば、土の魔法で切れ味を強めることもできる。

 風は少し特別だ。バーニアの仕掛けた山を吹き飛ばした時、だいぶ離れた所から撃ったというのに威力の減衰はあまり見られなかった。マリに教えてもらったが、風魔法は遠くまで届くのが強みだとか。

 ならば、風を纏った剣を振れば何が起きるのか。試さずにはいられないのが少年心だろ?今回はマリに思いっきりの強化魔法を掛けてもらう。きっとそれは凄いものになるだろうさ。


「ドラゴン、こちらに攻撃してきます!」


 見ると空を飛ぶドラゴンは広範囲の火炎放射ではなく、まるでこちら一点を狙い澄ますかのように巨大な火球を撃ってきた。

 ……勿論、それくらいのものなら。


「これは私の大切を守る、不屈で不通の盾!活路を拓く為、今その御姿明かしたまえ!」


 佳澄が、容易く受け止めてくれるとも。


 橙色の、巨大で半透明な盾。それが王城のテラスから飛び出して来た佳澄と共にドラゴンの火球を消し去った。

 あの時は必死でわからなかったけれど、盾を構えるあいつの姿は、どこか楽しそうにも見えた。


「あなた様、魔法の詠唱全て終わりました!」


 マリの報告を聞き大きく体を捻る。最早魔剣は嵐を纏い、近くの土を巻き込んでいる。ちょうどテニスボールを高く打ち上げるラケットのように、左へ切り上げる。


 空気を裂き、音を裂き、それは空を飛んでいく。斬撃を飛ばすなんて、人生で未だかつてあっただろうか?とにかくそれはドラゴンと、火球から俺たちを守った彼女に飛んでいき……。


「盾よ、盾よ!今難敵を撃ち倒す為、力を私に貸し与えたまえ!」


 佳澄が空中で盾を振り下ろし、グルグルと回りながら落ちていく。斬撃は横一線から、縦線を加えた十字になり、ドラゴンの鱗を削ぎ、肉を削ぎ……。


 ────見事、四つに分断した。

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