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私のための異世界転生  作者: 桃栗パメロ
第一章 魔法使いは恋を知る
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018 心動かさらて

書きました。最後まで読んでくださると幸いです。

 図書館の一角、ライヤとソファにもたれかかって王様とした会話を思い返す。護衛対象のお姫様が、大精霊の巫女であり、恋をする運命ごと失っていたこと。

 大精霊の巫女って言うけど……まずシステムの時点で最悪。そんな仰々しくてプレッシャーのある役につく時点でキッツいのに、恋する運命を失ってるって……そんなのって無いじゃん。


「なあ……佳澄?さっきの王様の話で何か思うところでもあったのか?…………やっぱり、大精霊の巫女の話か?」


 あんまりにも怒った顔をしていたのか、雷也を心配させちゃったかな……。深呼吸してから雷也に話を返す。


「思うところがあったっていうか……酷い話だなって。価値観の違いなのかな。王族として見たら恋する運命を失うって軽いことかもしれないけど、一人の乙女てして見たら最悪っていうか……。」


「……成程、そういうものなのか。俺にはなんだか実感が湧かなくてな。」

「運命丸ごと消えるっていうのがよく分かんないっつーか、そんなのアリかよって思ったな。」


 まるで他人事のように……この件については本当に他人事なんだけど、彼は冷静に語った。いや、冷静というより理解しようがなかったのかも?


 ……言われてみれば雷也と私で知ってる情報に差がつくのも当然だ。彼と私とでは見てきたものが違う。スタート地点も、時期も、まるっきり違うのだから。


「佳澄、もし今後恋をすることができなくなるってなったら、お前はどう思う?」


 不意の言葉にドキッとするけど、彼の目を見て落ち着いていく。こんなタイミングで、雷也の方から言ってくれるなんてことが起こらない。

 たぶん、彼は同情している。見ず知らずの相手に対し、自分の好きから遠ざかってしまったことただそれを憐んでいる。

 何を言おうか数秒思案して、質問に答える。


「恋ができなくなったら……きっと今よりずっと元気が無くなると思う。恋ってさ……乙女の原動力なの。恋は人を盲目にするだとか言われるけどさ、同時に大事な燃料なの。」

「たとえ恋をしてなくたって、いつか恋する可能性がある限りは頑張れる。そのくらい大切な物だって私は思ってる。」


 流石にわざとらしすぎたかな……と横目で雷也を見たけど、全く気づいてないみたいで、腕を組み考え込んでいる。………………昔からこういうとこ鈍かったし、別に良いんだけどさ。


 ………強敵も今はいない、きっと今が好機。少しだけ雷也に近づき、勇気を出して彼を……。


「ね、ねえ雷也?まだマリが来るまで掛かりそうだし、ちょっとお城の中とか見て……。」


「ライヤ様、カスミ様、お待たせして申し訳ありません!」


 ……タイミングが悪く、マリが帰ってくる。隣にいるのは……王様によく似た水色の髪…………もしかしてお姫様じゃない!?


「マリ、えらく嬉しそうだな。何かあったっつーか……隣の人は誰だ?」


「へー、ほーう。これがマリさんのお仲間の……なるほど〜。あっ!私のことはお気になさらず!何と言っておりましたか……ええそう!人間観察!人間観察が趣味なだけですので、悪しからず。」


 なんというか……濃い人なんだね、姫様。


「そうだ、帰る前に今後の動きとかを共有しておきたい。少し時間貰っても良いか?」


「ご迷惑おかけします。王様とはどんな話をされたのですか?それから……。」


 雷也とマリが話し始めた辺りで、姫様がこっそりこちらに寄ってきて片手をそうっと掴む。そして口の前に人差し指を立てた後、私を彼らから離した物陰に引っ張っていく。敵意は特に感じないけど……どういうつもり?


「ここまでくれば……聞こえませんわよね。申し訳ございません。無理やり引っ張っていってしまって。」


「それは良いけど……何の用ですか?大事なことなら私だけじゃなく雷也とマリにも話を通すべきかと……。」


「構いません。むしろあなた……カスミさん以外には聞こえない方が良い話ですので。」


 このお姫様のこと、よく読めないな。何の目的で……なんて思っているとお姫様が恐る恐る耳元に近づき、ヒソヒソ声で呟く。


「カスミさん……ライヤ様にお熱ですよね?」


 びっくりして大声が出そうになる。恋愛小説が好きとは聞いてたけど……こういうタイプだとは思ってなかったなあ!というか初対面でこれ聞いてくるって……直前のやりとり聞いてたらそう思うのも当然だけど!


「真っ赤っか……やはり思った通り、三角関係でしたのね。勇者はフィクションだって言っておられましたけど、やっぱり実にあるじゃありませんの!」

「私はマリと仲良くなってしまった為、表立って相談を受けることはできませんが、マリの次にあなたの事を応援していますわ。」


 そうしてぺこりとお辞儀をして、彼女は私を置いて雷也達の本へ戻っていった。

 恋をできないっていうけど、想像以上にアグレッシブな子で、勝手に運命に憤慨していた自分が馬鹿らしくなってくる。


 ……マリの次に、だけど。応援、されちゃったなあ。

読んでくださりありがとうございます。

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