013 甲冑の男
書きました。最後まで読んで感想や評価などくださると幸いです。
見慣れない天井、宿屋の物とは違う、一人で使うには寂しいダブルサイズのベッド。
これから自分の帰る場所になるであろう部屋で目を覚ます。この部屋の広さと高級さ、慣れるのはいつになることやら……。
昨日は荷物解いて案内された部屋の中で寛ぐだけ寛いで一日が終わってしまった……。別にダメって訳じゃないんだが、最近ずっと忙しくしてたしこういう日があっても良いんだろうけど、罪悪感がすごい。
遅くまで起きていたのか?佳澄もマリもまだ起きてこないな。
まあそれは良いんだが、小腹が空いた。朝飯になりそうものは無いし、あいつらの分含めて朝飯にパンでも買ってくるか。
「おはよう諸君!本日はお日柄もよくこんな日に腕前を試させてもらう!」
「……は?って危ねぇ!」
ドアを開けた瞬間、甲冑をつけた謎の男性が長剣で斬りあげてきた。咄嗟に腰に携えた剣で受け止めるが、すぐに剣を引いては別の方向からこちらを斬ろうと剣を振るう。
というか長剣を片手で軽々扱うとか、なんつー馬鹿力だ!?俺のは軽いしそもそもそんな長くない、元々片手で扱うことを想定されたような物だがあいつのは違う。両手剣と呼ばれるような代物を下から上へ振り上げることに一切の滞りも躊躇もない。そして、一切息を切らす様子も無い。一体何者なんだお前!
そもそもこいつが突然仕掛けてきたのは何故だ?腕前を試させてもらうって言っていたよな。だとしても手加減してる雰囲気がミリも感じないし、下手に手を抜くとこっちがやられる。
じゃあ、こっちも本気でやって良いよな……?
「おや、動きにキレが出てきたな!良い傾向だ、このまま自分を越えてみせてみろ!」
防戦一方の状態から攻撃を狙い始める。褒められてはいるものの隙を狙った渾身の一振りを軽くいなされるのは悔しいな。というかインストラクターみたいな言い方しやがって。まるでトレーニングでも受けている気分だ。
ただ、なにも単純に剣だけで勝負しようとしてるわけじゃない。
思い描くのは炎を纏う剣のイメージ、一振り一振りに炎の魔法を組み込む。そうすれば時たま炎を纏った一振りが出る、ドラゴンと戦った時は使うタイミングが無かったが、一週間の戦闘訓練中に見つけた秘技であり、軽い剣では足りない火力を補う術だ。
別に相手を燃やそうって魂胆では無い。こんな甲冑でガチガチに守られたら燃えようがないだろう。
かちあった剣を引くのが遅れた一瞬に、不意の突きを入れる。甲冑の男は少しのけぞるがまだまだ余裕はありそうだ。
「ふぅっ……成程、その剣は炎をも纏うか。見事、小手先といえどワシから一本奪うか。」
大した作戦ではない。ただ、こんな天気の良い直射日光の下でそんな甲冑付けてるんだ。暑さには弱くなりやすいだろう。
そこに炎を纏った一振りだ。周りの温度を上げるには一番手っ取り早い手段だろう?俺も無事に済む確証は無かったが幸いにも相手はすぐ折れてくれた……というよりは満足して剣を納めたかのように見えた。
「ちょっとちょっと!朝からなに玄関前でキンキンキンキンやり合ってるのさ!危ないからやめてほしいし、せめてやるなら他の所で……ってここ暑!」
まずい、煩くしすぎたな。寝ていた筈の佳澄が外行きの服に着替えて文句を言いにきたな。
「待ってくれ、彼に非は……暑いのは彼のせいだが煩かったのならそれはワシに責がある。ただ何をするでもなく外に出ただけの彼に襲いかかったのはワシだ。彼への糾弾は不当だ。」
「えっ……どういうこと?雷也、この人捕まえたほうが良いんじゃない?」
「いや…………俺も意図を掴みかねていてな。正直それで良い気も……。」
「す、少しってください!」
さっきまで寝ていたのか、寝巻のままのマリが慌てて飛び出してきた。起こしちゃって本当に悪いな……。
「そのお方はリベルテ王国の騎士団長にして王室の剣術指南役、ガープス・ハルブルク様です!」
「おお、ワシの名を覚えてくれていたか。そう、ワシがリベルテ騎士団団長、ガープス・ハルブルクだ。」
「早速で悪いが全員揃ったようなので本題に入らせてもらう。王から召集命令がかかっている。朝早くでまだ眠いかもしれないがちょっと着いてこい。」
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