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私のための異世界転生  作者: 桃栗パメロ
序章 少女は出会いを待っている
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009 レイシャ・スプリング

書きました。最後まで読んで感想や評価などくださると幸いです。

 出会いは小学生に入りたての頃だったか。隣に越してきたあいつは引っ込み思案というか、内気って印象だった。通学中も周りの会話に入らず、下を向いて歩いていた。

 そんなあいつの顔が見ていられなかったというか、このままにしたら駄目だって思ったんだっけな。積極的に話しかけて、クラスが同じだった年は給食の時も一緒に食べたりしたっけな。


 三年生になるころにはあいつからも話しかけて、一緒に遊びに行くようになって、いつの間にか友達も増えて、クラスの中心にいる一人とでも言えるような程、周りと打ち解けていった。

 それからが順風満帆だったかと言われたらそうでもなかった。時には嫉妬の対象になったり、先輩に迫られたりもしたらしいが、その時流した涙を受け止めて、互いに痛みを分かち合えた。


 そんな俺の幼馴染、佳澄がなんでここにいるんだ……?


「クモサキカスミとやら……見くびっていたつもりは無いが、ドラゴンの息吹をその盾一つで防ぐとは……。異世界人は何処までも楽しませてくれる。」


「師匠がスパルタ……って言っても伝わらないか。とにかくすごく厳しくってね、これくらい余裕余裕!」


 大きな盾を構えた、鎧を着込んだかつての幼馴染は、圧倒的な相手を前に大口を叩いてみせる。


「お前がここにいるってことは……あの槍使いも近くまで来ている……いや、むしろ王国からこちらを狙っているな?」

「異世界人が二人、加えてそこの魔法使いも盤面をひっくり返しうる程の魔力。形勢は揺るがないが……万が一が有り得るくらいか。」


「おい、散々言ってきた割に簡単に逃げるのか?レイシャに酷く言っていたけどよ、そこまで言っておいて逃げんのかよ。」


「まあ、弱ければ焼かれて終わり。もしこれを乗り越える強さがあるのならば、その時はまた立ち塞がるまで。」


 文句の一つでも言いたい所だったが、聞いてもいない様子。このまま言いっぱなしにさせて帰らせるのを易々と見過ごすってのも癪だが……。


「ああそうだ。一つ伝えておこう。そこのレイシャ・スプリングが無駄な妨害をしてまで食い止めたかったことがあったようだが、その願いは打ち滅ぼされた。」


「大精霊全てを封印し終わった。だろう?」


「我ら魔王軍は既に大精霊を打ち滅ぼし……何?」


 ここまで折れたかのように地にへたり込んでたレイシャが、まるでその言葉を待っていたかのように、ニカっと笑みを浮かべて立ち上がり、大きく弓を引く。

 というか大精霊だと!?いや、ニュアンスはわかるが、ようは各属性の凄い存在ってことだろ?それってマズイんじゃないか?


「私の矢、ちょっと特別な代物でさ。普通は燃えないはずなんだよ。それこそ大精霊が何か手を加えないとさ。」

「でも、あんたらが大精霊と協力できる立場になれるとは思えないんだよね。それにこの弓の力は確かに弱まっている。こんな平和な国で過ごしてたせいで気づくのがだいぶ遅くなったけどね。」


「貴様……何のつもりだ?」


「ただ私の矢が弱くなったっていうのに、どうしてあんたそんなに必死になって矢を防いだんだい?」


 レイシャが矢を放つ、バーニアはレイシャの挑発に乗らずに、若しくは本当に矢を受けたくなかったのか、火炎弾で飛んでくる矢を撃ち落とす。


「ほら、怖いんだよ。二度の挑発にも乗らないくらい、私の矢に当たりたくない。それが答えなんじゃないのか?」


 レイシャが持っていた弓を一回転させる。……これは事前の連携確認で決めた作戦の合図だ。

 今ここで?という疑問はあるが、この土壇場で決めたんだ。あいつを信じて、こちらも援護を行おうか。


「佳澄、積もる話はあるがそれは後だ!俺は魔女っ子っぽい奴の援護をするから、今から弓持った奴に攻撃が届かないよう守ってくれ!」


「……わかった。しっかり守るから、ちゃんと守ってあげるんだよ!」


 レイシャが今一度弓を引くのと同時に急いでマリの本へ向かう。落ちてきた木のおかげで素材には困らない。俺が剣を顔の横に、突きの前動作みたいに構える。


「そこの人?猫さん?どっちでも良いけど、相談があります。」


「ありがと、ヒソヒソ話でお願い。」


 バーニアはレイシャの攻撃を阻止せんと火炎弾を放つ。しかし盾はそれを許さず、全てを容易く受け止める。その間に、レイシャだけでなく佳澄にも作戦があるみたいで、レイシャに耳打ちで何か伝えている。


「何をするつもりかは知らないが、お前の攻撃など何の意味も持たない。それが分からないのだからこそ、お前は無能な木偶なのだ。」

「うんざりだ。これ以上平行線を貫くならば、我がお前の大切な者全て、反撃を待つことなく焼き払ってやろう。」


 バーニアが巨大な魔法陣を開き、地平線までもを飲み込む。本気でここでケリをつけるつもりか!?

 マリはそんな中で、むしろ今度はバーニアの言葉を無視し、俺とマリ語りかける。


「うん、最終的に騙した形になってしまったね、申し訳ない。不甲斐ない先輩だったかもしれないね。」


「不甲斐ないってそんな……レイシャ様、何をお考えで!?まるで、まるで……。」


「うん、最期さ。最期に先輩らしい所を見せさせておくれよ。」


 最期……最期っつったかあいつ!一体何しでかすつもりで……。


「私は……いや、違う言い方の方が格好いいかな。」

「我は水の大精霊ウンディーネの巫女!此度魔王軍四天王、紫炎のバーニアを打ち倒さんとするため己の全てを捧ぐ!」


「おやめくださいレイシャ様!貴方様の魔力でそんな無茶したら……!」


「ちょっと!リベルテに合図さえ送れたら良いってだけ、そこまでする必要は無いんだけど!?」


「渾身の一発、避けさせも防がせもする気はない、魂の一発。良いだろう、ならば我も全力でお前を砕く。」


 バーニアが開いていた魔法陣を狭めようとする……前にレイシャの引いていた矢は放たれた。


「ほら、ぼうっとしない!君たちも続けさまに撃ち込んで!」


 レイシャが怒鳴ったすぐさま俺たちも魔法で編んだ、矢……というよりはもはやただの塊か。それを思いっきりの風で打ち出す。

 さっきのもそうだが、本来ならばこのような威力はこの剣からは出ない。どういう仕組みかは知らないがマリの強化魔法と俺たち二人の魔力を注ぎ込むことで無理やり出力を上げているみたいだ。


 レイシャの渾身の一発は物凄い轟音を放ちながらバーニアの元へ飛んでいく。終始無言を貫いていたドラゴンがブレスで応戦、バーニアの方も向かってきた矢に対し過剰なまでの威力の熱線を浴びせる。水を放出してるお陰か、それでもレイシャの矢は衰えない。


 そこに俺たちの放った、巨大な木の塊の弾丸がドラゴンの顎に炸裂する。どんなデカブツだろうと、顎揺らされて平気な生き物はいないだろ!


「これならばさっさと退くべきだったか……。しかし、レイシャ・スプリング!貴様の命を賭けた矢は既に我が熱線が捉えた。ここから押し返してくれ……まさかあれは!」


「…………なんだよ、バイルのやつ、折角後輩に格好つけてるってのに、そんなことされたら霞むじゃないか。」


 ドラゴンが揺れている上でバーニアは持ち堪えていたが、リベルテの方角からやってきた巨大な光線?にモロにぶつかってよろけた。

 勿論そこにやって来るのはレイシャが放った特別な一撃。いよいよバーニアの胸元に突き刺さり、


「…………相打ちだね、紫炎のバーニア。」


 次の瞬間、大爆発でも起こったかのような衝撃波が辺りを襲った。

読んでくださりありがとうございます。

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