000 プロローグ
書きました。最後まで読んでくださると幸いです。
プラネタリウムのような星空がきらきらと輝く。足元には青白く光る魔法陣、目の前にはまるで神様みたいな、大きな翼を生やした女の人が立っていた。
さっきまで何をしていたんだっけ?確かバイクでスーパーまで向かってて……トラックがこっちによれて来て……。
「……そっか。私、死んだんだ。」
落胆とも納得ともとれる独り言が漏れ出た。
「おや、自力で気づきましたか。その通り、あなたは不幸にも死んでしまいました。
生き返ることも霊として留まることも叶いません。」
まるで他人事みたいに……本当に他人ではあるんだろうけど、薄情にも私の死を、やり直しの効かない死を告げてきた。
「別にいいよ。だって私、特に未練とか無いし。」
強がりのようにそう話しかける。確かに人生でやり残したこととかは無く、概ね満足している。けれど、家族や友達ともっと会って話したいし、美味しいものもっとたくさん食べたいし、それに……。
「その様子だとやり残したことがあるようですがご安心を、私が貴方に第二の生を特別に与えてさしあげましょう。」
「…………それってどういった?」
「あなたが暮らしていた世界とは違う世界。そこにあなたを召喚します。そちらの世界だと異世界転生、という言葉が近しいでしょうか?」
「あなたにはそこで魔王を討ち滅ぼしてほしいのです。安心なさい、先達もいますから意外と楽できますよ?それに平凡だった前世から一転、世界を救う英雄だなんて、魅力的だと思いません?」
……とりあえず聞いてみたけれどなんだか怪しい。正直世界を救う英雄に興味はないし平凡な人生で結構。提案してもらったところ悪いけど断ろうかな……。
「それに、転生に応じるのであれば何か一つあなた好みの力を与えることもできますよ。」
「とても強い武器が欲しいとか、だれにも負けない能力が欲しいとか、ただただお金が欲しいとか。何もかも違う異世界に向けての準備でもありますが、いつか思い描いたあんなことやそんなことを一つ自由にできると思ったら、どうです?」
「それは……。」
いらないと答えようとしたところで一つの可能性に気がついた。もしそれができるなら……なんて何度思っただろうか。
「……それって、自分以外の誰かを連れてくる。とかってできる?」
「……?別にできなくはないですが。」
「じゃ、じゃあさ。」
人生にやり直しとかいらないし第二の生とか名声とか、そんなものに興味は無いと思ってたけど、そういうことなら話は変わる。一回深呼吸をして、それから真摯に乞い願う。
「私の幼馴染、一年前に死んだ幼馴染。霧坂雷也を私と一緒に異世界に連れてって!」
私しか幸せにならない、身勝手な想いをただ乞い願う。
読んでくださりありがとうございます。
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