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アルビレオ  作者: 遠藤 敦子
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 夏のある日、郁奈から話したいことがあるとLINEが来た。ファミリーレストランで話がしたいそう。嫌な予感がして郁奈の指定した場所に向かうと、

「龍真ごめん。会社の人を好きになってしまって……。別れてほしい」

と別れを切り出された。これ以上引き止める理由もなかったので、その場ではわかったと了承する。

 帰り道に連絡先も消したけれど、家に帰ってから涙が止まらなくなった。いつから会社の人を好きになったのか。キャンプした時にはすでに郁奈の気持ちは冷めていたのか。俺は良い彼氏になれなかったのか。そう思うと頭がおかしくなりそうだ。

 翌日、僕は40℃近い高熱が出て佐々部チーフに欠勤の連絡をした。病院で検査を受けるも、感染症ではないらしい。血液検査をしても異常なし。医師いわく、ストレスが原因だろうとのことだった。その後も37℃から38℃台を行ったり来たりしていた。

 佐々部チーフから心療内科の受診を勧める内容の連絡が来ており、週明けに受診する。自律神経失調症、抑うつ状態との診断を受け、ひとまず1ヶ月休職することになった。佐々部チーフから着信があり、

「パソコンとか渡すものあるし、今日マンションに来ていい? 家には入らずにエントランスだけにするから」

とのことだ。佐々部チーフとエントランスで少しだけ話をし、その際に診断書を渡した。

 その後も通院を続けながら自宅療養する。佐々部チーフにいつ頃なら復帰できそうかと聞かれたけれど、復帰への不安ーー周りからの腫れ物扱いや気を遣われること、「どうせまた休職するだろう」と思われることーーが強く、なかなか復職には前向きになれなかった。結局僕は半年間の休職の後、ハーモニーハウジングには復帰せず退職してしまう。



 以前岡島さんには話していた通り、僕は社会復帰しようと派遣会社に登録した。土日祝休みの事務職で、なるべくクレーム対応もノルマもない仕事を条件に探す。コーディネーターから条件に合った仕事を紹介してもらい、職場見学に行き、トントン拍子に採用が決まった。

 初出勤前日は緊張して寝付けなかったものの、行ってみると上司も教育係の方も優しくて心配するほどではなかったのだ。男性が多めの職場だったけれど、ハラスメントなどもなく平和な雰囲気だった。

 そんな中、久しぶりにTikTokに顔出しなしで弾き語りの動画を投稿する。とあるインフルエンサーが僕の弾き語り動画にコメントをくれたことがきっかけで、SNS上でどんどん拡散されていった。応援コメントも増え、細々とでも音楽を続けていて良かったと思った。

 

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