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アルビレオ  作者: 遠藤 敦子
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 土曜日、僕は郁奈と会う前にショッピングモール内のフラワーショップで花束を買う。全体的にピンクを基調としてほしいとリクエストし、その通りにしてもらった。それから駅で郁奈と合流し、カフェに向かう。郁奈は僕が花束を持っていることに気づいているのかいないのか、すごく嬉しそうな様子だ。

「郁奈、卒業おめでとう」

料理を注文し、待っている間に郁奈に花束を渡した。郁奈は驚きながらも、目を輝かせている。

「龍真ありがとう! しかもピンクの花束まで……!」

しかしお祝いはそれだけではない。パスタランチを食べた後に、あるものが運ばれてくることになるのだ。

 そう、あるものとはデザートプレートだ。料理を食べ終わり、男性店員がデザートプレートを運んできた。

「ご卒業おめでとうございます!」

と言いながら。

「良かったらお2人の写真も撮らせていただきますね!」

男性店員からの申し出を受け、僕は自分のiPhoneを渡す。それからツーショットも撮ってもらえた。他の友達のいる前ではなくとも、2人だけの空間でお祝いできて素敵な時間となる。



 僕はこの4月でハーモニーハウジングで働き出して3年目だ。何度も辞めたいと思いながらも、なんだかんだでここまで来てしまった。もはや辞めるタイミングを見失っていたのだと思う。

 40代の男性派遣社員・岡島(おかじま)さんが入社し、僕は岡島さんの教育係に任命された。岡島さんは真面目で努力家なので、業務を覚えるのがすごく早い。また社会人経験が豊富なので電話対応もうまく、こちらが冷汗をかくようなことは全くなかった。そんな岡島さんは前職で正社員として10年以上役職についていたけれど、体調不良になって派遣社員にシフトしたそう。

 タバコ休憩で岡島さんと一緒した際、3月末で辞めようと思うと言ってしまった。岡島さんに理由を聞かれ、音楽が好きなことやハーモニーハウジングしか受からなかったこと、退職後は派遣社員としてお金を稼ぎながら音楽もしたいということを話す。すると岡島さんは、

「構谷くんまだ若いし、いろいろやってみたら良いんじゃない」

とのことだった。

 プライベートでは郁奈が就職してからも、変わらず仲良く過ごしている。キャンプも楽しんでおり、郁奈との恋愛話を波多野さんや駿によくしていた。クレーム対応で精神的に辛くなることもあったけれど、それでも頑張ってやってこられたのは郁奈がいたからだ。しかしそう思っていたのは、僕だけだったみたいだ。

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