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アルビレオ  作者: 遠藤 敦子
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 12月28日に僕は有給休暇を取って、郁奈とディズニーランドに行く。年末年始ということもあって人が多かったけれど、そんなことは気にならないくらい楽しんだ。僕がミッキーマウス、郁奈はミニーマウスのカチューシャをつける。普段は絶対にこんなことしないのに、夢の国ならなんだってありなのだ。もはや恥ずかしさなどどこ吹く風だった。職場用のお土産も忘れずに購入する。僕は甘いものが得意ではないので、煎餅にした。


 年が明け、僕は弘中さんに担当してもらう分の引き継ぎを行う。いまは僕と弘中さん、立川さんと佐々部チーフが隣同士で座っているけれど、ゆくゆくは席替えするつもりらしい。弘中さんを佐々部チーフの横にすることで、何かあった際に相談しやすいようにするためだそう。

 本格的に引き継ぎが完了し、弘中さんも独り立ちしていった。そのタイミングで席替えを行うことになる。僕はいま弘中さんの斜め前にいるので、何か訊かれたらいつでも答えられる体制でいた。しかし弘中さんはなるべく自力で解決させるか佐々部チーフに相談していたので、よほどのことがない限り(オーナー様に送る書類をWチェックしてほしい、など)は僕に聞きに来ることは少なかったのだ。



 時が過ぎて、3月になる。郁奈は友達と韓国に卒業旅行に行っているので、その間僕は仕事にのめり込んでいた。

 弘中さんが僕の担当物件のお客様からの電話をとったそうで、その件について報告を受ける。海外の方でかなりの片言なので、何を言っているかよくわからなかったらしい。

「前にお風呂の配管の清掃してもらってから、お風呂から廊下にまで水が漏れてきて警察呼ぼうかと思った! こんなんじゃ料理とかもできないし、どうしてくれるの!」

と電話越しに大絶叫されたそうで、弘中さんはかなり困り果てていた。電話のメモを見せてもらうと赤ペンで「バーカ、お前はクソか」「そんなくだらない内容で警察呼ぶな」と書かれていたので、よっぽど変わった人だったのだろう。

 佐々部チーフと相談してその女性(海外出身で片言の日本語を話す年配の方)に電話したけれど、「とにかく今すぐ来て!」の一点張りだった。業者を手配してからになるので今すぐには難しいと言うも、なかなか納得されない。その頃に別の同僚が女性の日本人夫からの電話をとり、「なんですぐに来れないんだ! 緊急事態なんだぞ? お前らが来れないなら警察呼ぼうか?」と言われたのだそう。

 夫の方とも話をし、19時にアポをとって僕と佐々部チーフと工事業者で相手方の家を訪問する。僕たちが来た時点では水もだいぶ引いたそうだけれど、当初の動画を見せてもらってお風呂の配管を点検した。これで対応は一旦完了し、また何かあれば連絡くださいと伝えて相手方の家を出た。

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