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アルビレオ  作者: 遠藤 敦子
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 時が過ぎて、僕は社会人2年目になる。何度も辞めたいと思っていたのに、気づけば社会人2年目の冬になっていた。新しく入社してきた1歳上の女性派遣社員・弘中(ひろなか)さんの教育係になってほしいと、佐々部チーフに任命される。弘中さんは真面目な人で覚えるのも遅い方ではない(本人は覚えるのが苦手だと言っていたけれど)ので、教育係も苦ではなかったのだ。

 プライベートでは、休みの日に郁奈とキャンプをした。先にクリスマスプレゼントとして、ウシャンカ(ロシア人が被っている、耳当て付きの防寒用帽子)を渡す。郁奈はショートヘアだけれど、帽子が雰囲気と合っていて可愛かったのだ。プレゼントして良かったと思った。



 ある日、僕は弘中さんに外回りの仕事(僕の担当物件で、共用部の掃除が行き届いているか見てもらった)を依頼した。弘中さんが事務所に戻ってきたので、どうだったか聞いてみる。最初は写真を見せてもらいながら話していた弘中さんだけれど、突然目からぽろぽろ涙を流し始めた。

「大丈夫ですか? 何かありましたか?」

僕は驚いて弘中さんに聞いてみるも、弘中さんは首を横に振る。というか本人も何が起きているかわかっていない様子だった。

「じゃあ息抜きにコンビニ行きましょう!」

と僕が提案すると、それは良いと断られてしまう。気づかないうちに僕が何かしたのだろうかと、モヤモヤした。というのも本人が理由を話せる状態ではないから。

 翌朝、弘中さんがいつも通り出社してきた。今日は元気そうなので僕は安心する。

「昨日は驚かせてすみません。構谷(かまたに)さんが悪いとかじゃなくて、私が慣れないことだらけでメンタルやられてて……」

と弘中さんにこっそり、涙の理由を教えてもらった。僕のせいではないとのことだったけれど、メンタルがやられているのは心配だ。


 佐々部チーフから「来週の木曜日空いてる?」と訊かれた。弘中さんの歓迎会をするらしい。メンバーは岡村部長と佐々部チーフ、僕、弘中さん、女性社員の立川(たちかわ)さんだという。

「木曜日空いてますよ」

僕が言うと、佐々部チーフは「じゃあ、また場所とか決まったら言うわ」と自席に戻っていった。



 木曜日の勤務後、会社近くの焼き鳥に特化した居酒屋で弘中さんの歓迎会が行われることになる。岡村部長と佐々部チーフ、僕、立川さんはすでに到着していた。しかし弘中さんが道に迷ったらしく、慌てた様子で向かって来る。

「すみません、場所がわからなくて遅くなってしまって……」

弘中さんは息切れしながらそう言っていたけれど、佐々部チーフに誘導されて全員で入店する。

「18時半から5名で予約している、佐々部です」

佐々部チーフが言うと、若い女性店員が僕たちを席まで誘導してくれた。

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