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アルビレオ  作者: 遠藤 敦子
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 僕は中学時代はバスケットボール部所属だったけれど、怪我が原因でバスケを続けることができなくなってしまったのだ。では高校時代は何をしていたかというと、軽音部にいた。大学進学してからも軽音サークルで細々と音楽は続けていた。

 大学3回生になり、さあ就職活動するぞという気持ちになる。ミュージシャンで食べていくのは無理だとわかっていたので、無難にサラリーマンになるかと思っていた。大学まで学費を出してもらったからには、良い企業に入って両親に恩返ししたかったのだ。しかし僕は面接が得意ではないので、内定をもらえたのはマンション管理会社のハーモニーハウジングのみだった。そこで僕はハーモニーハウジングへの入社を決める。



 大学卒業後、僕はハーモニーハウジングに入社した。共用部管理一部第1チームに配属され、岡村(おかむら)部長と佐々(ささべ)チーフのもとで仕事のOJTを受ける。最初は教育係の石原(いしはら)さんという男性社員にたくさんのことを教わり、それからはどんどん僕自身の担当物件を持つようになった。

 担当物件を持ち出してからはどんどんクレームが増えてくる。

「宅配ボックスが開かない。壊れているのではないか」

「郵便受けをもらった資料通りに開けようとしても開かない」

「共用廊下で子どもが走り回ったり遊んだりしていてうるさいので注意してほしい。自分の家ならともかく、人ん家の廊下で走り回るなんてどうかと思う」

そんなクレームが僕の担当物件のお客様から来ていた。その都度迅速に対応し、なるべく早めに解決させようと努めたけれど、入社して3ヶ月目の時に体調不良で1週間会社を休んだ。精神的に限界が来てしまったのだ。

 1週間休んで迷惑をかけたので、復帰後は休んだ分を取り戻そうとする。クレームの電話が来るたび、辞めたいと何度も思った。それでもなんとか続けられたのは、周りの同僚に恵まれたのと恋人の存在もあったからだ。

 2歳下の恋人の佐田山郁奈(さたやまあやな)とは大学時代からの付き合いだ。僕の家でお泊まりデートしていた時、お酒を飲んでいたこともあって

「とりあえず3年は続けるけど、俺クレーム対応とか向いてないと思う。お客さんの声を真剣に聞いちゃうし、電話越しに怒鳴られたらメンタルやられるから」

と本音が出てしまった。しかし郁奈は

「嫌なの? どうして? 龍真(りゅうま)の真剣に話を聞こうとするところ、私は好きだけどな!」

と言ってくれる。こんな僕を肯定してくれて救われたような気分だ。

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