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冬のアリスが見るこころ

作者: かき

 アリスはおてんばなお姫様。お勉強をいつもこっそりと部屋を抜け出してながーいカーペットの引かれた廊下を行ったり来たり。優しいコックさんからおやつを貰ってお庭で鳥と一緒にティータイムができた日なんてもう最高!

 でもアリスはうっかりさん。お城の中には鎧を着ている厳しい大人たちもいーっぱい。お城が大きな鬼ごっこ会場に早変わり。それでも結局捕まって後から王様や王女様に怒られてしまうのでした。


 そして今日はクリスマス!今日もいつものようにニコニコしながら鎧を着ているこわーい大人から逃げている最中でした。もう大人はすぐそこにいます。今日はまだまだお昼過ぎ、捕まるわけにはいきません。

 そこでアリスお嬢様、階段の手すりを滑って降りてみました。これがなんともスルスルと、何十段もある階段を一っ飛び。これには大人たちも驚いてよりいっそう激しく追ってきますが得意になったお姫様は大人が迫るとすぐに階段を滑ってしまいます。

 そこで大人も考えたのか、ながい廊下の真ん中で挟み撃ちにされてしまいました。これにはさすがのお姫様もどうしようもありません。

 大人に連れられて部屋に帰っているとき、また階段の手すりにお姫様が乗ろうとします。でも今回は焦ってバランスを崩しちゃった。すると階段の外側に真っ逆さまに落ちてしまいました。


 お嬢様が周りを見るとそこは雪の降る森の中でした。寒さに震えていると、そこにはいつももらっているお菓子がいっぱい浮いていました。それを見るとお姫様はすぐに走って追いかけます。だって今日はまだお菓子をもらっていないのに捕まってしまったから、ここで食べてしまおうと思ったのです。

 しかしお菓子はお姫様が走って近寄ると一瞬プルプルと震えるとすぐに逃げてしまいます。結局すぐにお菓子を見失ってしましました。するとすぐにフカフカのぬいぐるみのお友達たちが姿をあらわします。みんなで遊んでいるけれど、やっぱり近づくとすぐにどこかへ行ってしまいます。

 もうなんなの!と泣きそうになっているとそこには見慣れた鎧を着た大人がいました。やっと助かったと思って声をかけた瞬間、笑いながら大人も走って逃げてしまいました。

 そういえばここはどこかしら。ふとそう思って周りをみても雪とと草と木しかありません。アリスはこんなに深い森には来たことがないわ、と気づくと同時に不安になります。ここにはお腹が空いたときにたべるお菓子も、柔らかくて暖かいぬいぐるみも、頼りになる大人もいないんだ、と考えるとそれだけでこの森がひどく不気味でした。


 しばらく一人で目をずっと拭いながら歩いていますが、もう寒さは限界で唇が驚くほど暗い色になっていました。しかし足音が聞こえたので振り向くとそこにいたのはアリスと同じ顔の女の子でした。お姫様は泣きながらあなたもどうせ逃げるんでしょ!と叫びます。しかし目の前のお嬢様は真剣な顔でアリスの方へ向かって歩いてきます。そうしてアリスをぎゅっと抱きしめて同じ顔のお嬢様はこう言いました。


 怖かった?


 その言葉一つで同じ顔のお嬢様の胸に顔を埋めながら泣いて、泣いて、泣きはらすまで泣きました。いつしかお菓子も、ぬいぐるみも、鎧を着た大人も一緒でした。


 アリスは気づくといつものお城にいました。そこでは鎧を着た大人やコックさん、王様、王女様がみんないました。


 その日以降、お姫様はお勉強を抜け出さずちゃんとするようになりました。それじゃあ、もうずっとお姫様は遊べなくなってしまったのでしょうか。


 毎年、クリスマスの夜にある国ではお城のみんなで鬼ごっこをするそうです。ルールは二つだけ。みんなと楽しむこと。もう一つはだれも怖い思いをしないこと。

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― 新着の感想 ―
[一言] おてんばだけど愛らしいお姫様ですね!
2023/12/28 21:38 退会済み
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