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宇宙旅行  作者: マコト
侍が住む 侍の星
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驚愕!武蔵の実力

 宿に帰ると、そこには田中と武蔵が帰ってきていた。


 宿の部屋自体は、襖と呼ばれるもので三つに区切られているが、一つ一つは狭いものであった。畳と呼ばれるものがあり、深夜には布団というものを敷いて寝るらしい。窓からは街中を見ることも出来、風が吹くと、田中が買って来た風鈴と呼ばれるものが美しい音を奏でてくれる。ラズとしては満足の部屋であった。


 そんな部屋の真ん中で、田中と武蔵は一つのある物を見つめていた。その見つめている先には竹で作られたような棒があった。恐らくは竹刀であろう。


「あんたは、この竹刀を持って、あの屋敷に行くんだ」

「竹刀じゃ、心細いでござるよ。それに侍の斬り合いに練習用の竹刀では格好つかないでござる。第一、竹刀では相手を倒せるか分からないでござるよ?」

「なら、刀を握れるのか? 無理なんだろ? それなら何も出来ないよりも竹刀でも持って相手を攻撃してくれるお手伝いをお願いしたいね」


 二人は話に集中しており、ラズとクレアが帰ってきたことに気付かないようであった。


「ただいま」


 ラズが言うと、二人がこちらに視線を向けてくる。


「お! お帰り。君らも説得してくれよ。彼にこの竹刀を持って欲しいんだ。相手を殺傷しない武器なら、武蔵も持てそうだろ?」


 田中が困った表情をしていた。彼が言う様に竹刀というアイデアは悪く無い様に思えた。武蔵もだが、ラズもこれを持って奪還作戦に参加したい。それは、クレアも同じ気持ちだったのか、彼女が武蔵に視線を向ける。


「うーん、争いは良くないし、相手を傷つけるなんてとんでもないことじゃない? 相手を思いやる武器を携えているなんて、格好いいと思うな」

「ほ、本当でござるか?」


 クレアの言葉に、武蔵が嬉しそうな表情をする。


「ちょっと、竹刀を持った風で構えて見なよ。彼女から、もっと、ありがたいお言葉を頂けるかもよ」


 田中がからかうように言う。武蔵が構えを取ったら、彼の士気を上げるためにも、更に盛り上げるつもりなのだろう。


 武蔵はゆっくりと竹刀を持つ様な構えをとりながら、立ち上がる。すると、先程までの空気が嘘のように凍りつく。それほど、武蔵の構えは素人目にも堂に入っていた。


 そのまま、武蔵が武器を振るう様な動作をする。それは圧巻の迫力があった。田中も同じ感想だったらしく、驚愕の表情をしていた。


「これは驚いたな。あんた本当に達人さんなのかい?」

「だから言ったでござろう。あの守衛如きは腕では拙者の相手にはならん。だからこそ、煙たがられておるのでござるがな・・・」


 武蔵は苦笑いする。


「なるほどな。あの守衛が斬るのを辞めたのは、あんたが万が一にでも刀を抜き、自らが斬られるのを恐れたためってことだな。これは戦力になるな」


 あの守衛は冗談だと言っていた。そう考えると、彼は嘘をついたと言うことだろうか。そういえば、胸を押さえていた様に思えた。


 会話が終わると、ラズは自らが持っている、地球の本をどこかに置く事を考える。すると、部屋の片隅に緑の布に包まれた物が目に入り、彼も荷物をそこに置くことにする。


「ほう、恐らくは地球堂の商品でござるか?」


 ラズのその行動を見た武蔵が声をかけて来る。


「地球教とかいうのの商品かい? 宗教だっていうから空想のもんだろ?」


 田中がラズがいる方に近付いてくる。彼は置いた荷物の中にある一冊の本を取り出す。そこには地球の青々しい全体像が表紙として描かれていた。


「相変わらず、美しい星だ」


 田中が言うのであれば、これは想像の地球の姿ではなく、真実が描かれているということだろう。


「確か、田中殿の故郷は、地球とか言っておったな。拙者は宗教には興味が無いのでよく分からないのだが、神々が住むとか?」

「まあね。人は崇高なものだからね。神と呼ばれてもおかしくないかもね」


 田中言葉に、ラズは違和感を覚える。田中が人を崇高と言うタイプの人間に思えなかったためだ。現にダリア星では神と人の同一性を否定していたはずだ。


「小次郎の話は、拙者には分からなかったが、あいつと会うことは、お主の記憶を戻すのに良い出会いになるかもしれないでござるな」

「死者になる人間と語らえるかは分からないがね」


 田中が物騒なことを言うと、地球の本の近くに置かれていた、緑の布に包まれているものに手を入れる。そこからは、鞘に収まった刀が二本顔を出す。


「もちろん、人を傷つけるのは、俺も好きじゃない。ただ、俺は貴方のように向かってくる相手に手心を加えることは出来ない」


 田中が剣を持ちながら言うが、相手を傷つけない方法も探るべきでは無いか。


「もう一本は君にだ」


 田中は置いてあった刀の一本をラズに手渡す。


「でも、俺は人なんて斬れないよ」

「斬らなくてもいい。とりあえず持っておくんだ。丸腰だと君が狙われる。それに、俺も君が人を斬る姿なんか見たくない」

「俺も田中さんが人を斬る姿を見たくはないよ」

「まあ、出来れば斬らないようにするさ」


 田中が笑みを浮かべるが、それが守られるかは分からなかった。


「拙者もそれには反対だ。何度か地球教の屋敷に入ったことがある拙者が先導するから、皆は付いてきて欲しいのでござる。拙者一人で片をつけるでござるよ」

「何故、一人で?」


 武蔵の言葉に田中が疑問を言葉にする。


「小次郎とは旧知の仲。命を奪うのは忍びない。田中殿にも人を斬らせたくないし、敵味方問わずに、大怪我をしないで魔物殿を奪還したいのでござるよ」

「そうじゃない。貴方一人で何とかなるものなのか? 俺らには大切な計画だ」

「今までは竹刀を持つという発想がなかった。これなら、武器を震えるかもしれん。拙者一人で何とかなりそうでござる。任せて」


 武蔵はそう言うと自らの胸を叩く。

お読みくださりありがとうございます。

途中の章から入られた方は、最初からお読みいただけると嬉しいです。

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