おつかい
通信のための魔道具というのは、なかなかお目にかかれるものではない。理由は時空魔法を使えるものがいなければ、ただのでかい箱だからだ。この魔道具は、あくまで莫大な魔力を消費する時空魔法の長時間の展開を補助するものであり、誰でも時空魔法が使えるという猫型ロボットが出してくれる便利な道具には足元には及ばない。
その魔道具を使用するということは時空魔法を使える術者が、王の側近にいるということでありそんな実力者を従えているというだけで、王の気量がわかる。
画面が空中に出てきたと思ったら、そこには分かりやすく王冠を被った三十代くらいの男と灰色のローブに身を包んだ若い女がいる。
「俺がフィルベニア国王だ」
見た目の若さと相反した荘厳な声が、その堂々とした一挙手一投足が王のカリスマ性をこれでもかと言わんばかりに主張してくる。
「僕はダークエルフの代表で来ました、セシルです」
「そうか、そんでその後ろにいる嬢ちゃんたちは関係者なのか?」
初めて見るであろうダークエルフを見ても動じずに話を続ける。
「違います。彼女達は僕の護衛で、銀髪の方がマリーで金髪の方がリグレスです」
「ならば、少し出ていったくれねぇか?腹割って話てえんだ」
断る理由はいくつかあった気がするが、そんな気は起きずに俺とリグレスは部屋を出ることになった。その時にセシルは頑張ってくるねと小さくガッツポーズをしてきた。
俺とリグレスは何かあったらすぐに飛び込めるように、扉の前で警戒状態に入っていたが、2時間半ほど経ってから扉が開き。ホクホクした顔のセシルが出てきた。
「ダークエルフの村を友好国扱いしてくれるんだって」
「は?あいつらにメリットないだろ友好国なんて」
「僕もそう言ったんだけどね....税も別に取らないし、交易も始めてくれるらしい」
「そうか、でもなんかあの王のやることだからなんか裏切ることとかはない気がすな」
少ししか見ていないが、俺はもう王に謎の信頼をおいてしまった。
「お前らもう戻るのか?」
サノスは心底驚いた顔で声をかけてきた。
「そうだな、この結果だけ早く伝えないと」
「明日からここで武闘大会があるんだ」
「武闘大会?」
「この武闘大会はすげえぞ、世界中から強者達が集まって来るからな。お前らも見た感じ結構やるんだろ?」
「武闘大会か....」
俺の育ての親であるマグナが優勝した大会である。俺も自分の実力を試したい、優勝したらなんか面倒臭いことが起こるような気がするが、出たいものは出たい。
「出るんだったらエントリーは今日までだからな」
サノスは手をひらひらさせながら仕事場に戻っていった。
「セシルの護衛もあるしなぁ、頼まれたからにはやらないと」
「出たいんだったら出たら?別にそんなに急いで帰らなくてもいいし」
「そうか、じゃあ一応俺が結果だけ伝えてくる」
「え?無理じゃない?魔道具もないし時空魔法も使えないでしょ?」
「大丈夫だ、多分二時間くらいで帰ってこれるはず」
俺は火属性の魔法を足元にかけてロケットの要領でダークエルフの村改め、ダークエルフの国の方に飛んで行った。
1時間も経たないうちにダークエルフの国が見えたのだが、煙が上がっている。
何者かに襲われているのだろう、俺は急いでダークエルフの王のところに向かった。
「じいさんどうした!」
「おぉマリー、ちょうどいいところに!というわけでもないな」
「ないの?」
「あぁ、この程度の奴らならなんの問題もない、ダークエルフ1人で一騎当千!舐めてもらっちゃ困る」
じいさん、なんか変なスイッチ入ってないか?言葉使いもだいぶ変わってるし、、、
俺はセシルが勝ち取った成果を報告してから帰ることにした。
焦らせられたが、問題がないならヨシ!




