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私、時永めぐる(12)は、5度目の人生を歩んでいる

中学1年生編。

……といいつつも、学校生活に関してはほぼまったく触れていません。


 私、時永めぐる(12)は、5度目の人生を歩んでいる。


 あぁ、うん。苗字が変わったよ。とはいえ、お母さんがまた離婚したってわけじゃないよ。


 ほら、神隠し騒動と殺人未遂騒動とで、私の生活がいろいろと面倒なことになってきてね。


 周囲がなんというか……ね。分かるでしょう?



 ★ ☆ ★



 卒業式の殺人未遂事件後、どうなったのかを話そう。


 とはいえ、たいして話すこともないんだけれどね。


 お決まりの警察からの事情聴取。ひとまずはパトカーの中であれこれ聞かれ、後日、警察署(学校近くの交番ではなく、隣町にある警察署)にまで行くことになった。


 この町、警察署がないんだよね。あるのは交番だけで。だから110番するよりも、交番の番号に連絡した方が警察ははやく駆けつけてくれるんだよ。……多分。110番して、そこから交番に指示が行くほうが正式なのかな? でも直接のほうが早い気がするなぁ。まぁ、わかんないや。


 尚、お父さんが云うには、交番の連中は信用ならないそうだ。


 なにかあったんだろうなぁ。


 その日はそれで終了。帰宅。


 で、翌日に警察署にまで行くことに。時間はいつでも良いとのことだったけれど、朝一で行くことにした。もちろん、私だけじゃなく、母もだ。母も当事者だからね。そして付き添いとして父も同行。というか、車の免許は父しか持っていない。


 そして兄はひとりお留守番。ある意味一番面倒な役どころだ。


 やって来る取材申し込みというか、取材そのものや、取材の電話を捌いたりしないといけないんだよ。電話線を抜くわけにもいかないから。電話と玄関の呼び鈴に耐えるなんてことになるだろう。


 お兄ちゃんの受験が終わってて良かったよ。


 帰ったら、ちゃんと労ってあげよう。


 ……。

 ……。

 ……。


 なんてことを考えていたんだよ。


 なんでマスコミはあんなに察知能力が高いんだよ。


 住宅街で早朝だからか、自宅前にマスコミはいなくて安心していたら、警察署で待ち構えているとかさ。


 押し合いへし合いすることはなかったけれど、マスコミ連中で造られた道を通るのは凄い度胸がいったよ。おまけにあれこれ質問を飛ばして来るし。


 そんなこんなで疲れ果てて帰宅。


 逆にお兄ちゃんに労われたよ。




 そんなのが数日続いた結果――




「これじゃまともに学校に通えないよ」


 私は両親に愚痴った。マスコミの無作法は収まったけれど、その報道の結果、

周囲の私に対する態度が凄まじく面倒なことになったのだ。


 腫れ物に触るように接する者もいれば、ずけずけと「ねぇねぇ、殺されそうになったのって、どんな気持ち?」なんて聞いてくる話したことも無いどころか、見覚えも無いどこぞの輩。


 もはやうかつに外に出られない。コンビニにいくなんてもっての他だ。


 そういや、あの若造……高校生なのか大学生なのか不明だけれど、アレはなんだったんだろう? よくよく考えたら凄い怖いんだけど。普通に不審者だし。


 あの中年女の身内とかじゃないだろうな?


 そういえば、アレの旦那とかから謝罪の言葉も無いな。


 普通はあって然るべきじゃないの? やらかしたことがやらかしたことだから、顔を出せないとか思ってるのかもしれないけどさ。


 とにかくも、この状況が収まるのを待つにしても、人の噂も七十五日っていうように3ヵ月くらいも落ち着かずにいるというのも問題だ。


 ということで家族会議が行われ、どう対処するかを決めた。



 ★ ☆ ★



 会議の結果、私は祖父母の元へとお引っ越し。同時に苗字を父方の“川守”から母方の“時永”へと変えたんだよ。


 ……いや、なんというかさ、お母さんの実家の苗字って気にしたことなかったらまるっきり知らなかったんだよ。

 田舎にいっても表札見るなんてことしないし、2歳になるまで住んでたんだけれど、お母さんのヤンデレレベルの溺愛のせいで外との接点も殆どなかったからね。


 で、このほど苗字を変更するにあたって知ったんだけれど……


 この名前って、なんか……ねぇ。現状を暗示してない?


 【時永めぐる】。永遠に人生をループする暗示みたいじゃん。永遠に時間をぐるぐる回るって感じでさ。実際、ループしまくってるわけだし。


 そんなこんなで始まった田舎生活。


 両親と兄を置いて、私ひとりで祖父母の所へ来たわけだけれど、すごい歓迎された。


 尚、殺人未遂事件後、ヤンデレレベルの上がった母は私と離れることをもの凄いゴネたけどね。最終的には祖父母の説得で送り出してくれた。その非常なヤンデレ気質をなんとか矯正してしてほしい。

 家を出る際に父に内緒で話したところ、苦笑いされたよ。


 田舎には2歳になるまでしかいなかったわけだけれど、人生をやり直す度にここに来ているからね。期間としてはループを含めて計10年程度だけれど、見知った場所だ。


 ただ、私の姿は世間に知れてしまったからね。苗字こそ変えたけれど、以前の見てくれのままだと面倒なことにしかならないだろうと、思いっきりイメチェンをすることにした。


 三つ編みおさげに、実用一辺倒なデザインの伊達眼鏡。


 ……なんか、昭和時代の学級委員長(偏見)みたいな見た目にしたよ。却って目立ちそうな気もするけれど、まぁ、大丈夫だろう。


 そうして中学校に進学して、平穏な中学校生活をスタートできた。


 ただ、長いこと小学生をループしてた弊害がでたけど。


 ほら、私、4年生からいじめに遭ってたわけじゃない。で、召喚イベント後は何故か他のクラスに編入されることもなく、6年生もひとりきりのクラスという異常な状況。


 ……よくあんなのが許されたな? まぁ、どうでもいいけど。


 当然、4年生までに友人を作っていたとしても、いじめ開始とともに全て無駄になるから、誰かと仲良くなろうなんてまったく考えなくなったんだよ、2度目の人生から。


 うん。友達の作り方がわからん。すっかり忘れた。2度目の人生から考えると約40年間ボッチでいたわけだからね。


 そんなわけで中学もボッチ生活だよ。気楽だけど。


 まぁ、でも、授業ではクラスメートとは普通に話しはするし、学校で孤立しているというほどではないよ。友人関係といえるような親密さは欠片も無いけど。


 だから放課後はとても暇だ。誰かとつるむこともないから。


 部活動? 帰宅部だよ。


 帰ってからなにをする? ……やることない。


 なので、祖父母のお手伝いとかを積極的にやっているよ。


 まだ年寄りって歳でもないけど、ふたりとも若いってわけじゃないからね。


 草むしりとか畑の手伝いとか、色々あるんだよ。


 ……裏に聳えてるお山が家の土地と知った時には唖然としたけど。


 その山に向かう小道の外れに、小さな祠があった。かなーり古い感じで、いまにも朽ち果てそうな雰囲気の祠。蔦が絡みついていて酷い有様だ。


 一応、ここもうちの敷地内だよね? え? なんで放置されているんだろ?


 気になったので、祖父母に聞いたところ、そんな場所に祠なんぞありゃせんぞ、との答え。翌日、祖父と一緒にその場所に行ったところ、私にはその祠がみえるけれど、祖父にはまるっきり認識が出来ていないと判明した。


 え、どうなってるの?


 夢にでもみたんだろう、と祖父に笑われ、私たちは家に帰った。


 その晩、コアからその絡繰りの予想を聞かされた。


《強力な認識阻害が掛けられているようです》


 は? なんでいきなり現代日本でそんな魔法的な要素が!?


「それならなんで私は見えたの?」


《恐らくは、ダンジョンの領域内にある状態では認識できているのではないのでしょうか?》


 コアの答えに、私は目を瞬いた。


《明日にでも、試しに領域を閉じた状態で確認してみましょう》


 ダンジョン領域。私がコアと一体になった結果、歩くダンジョンなんて感じになっている。そして私を中心として、半径5mくらいをダンジョンの領域とすることができている。これでなにかできるのかっていうと、領域内にアイテムやモンスターをポップさせるくらい。

 なにせ私に合わせて移動する形だから、基本設置系のものを出現させることはできない。地面がダンジョンの領域じゃないからね。アイテムやモンスターは、ポップさせて落とす……放る? ことはできるけど。

 普段領域を展開しっぱなしなのは、その領域内を通った人や動物からDPを回収するためだ。通り抜けただけでも、1Pくらいは入手できるからね。


 で、領域を閉じた結果だけど。


 まったく見えなくなった。それどころか、祠のあった場所をまっすぐ通り抜けることもできた。


 これは……祠ってことだから、完全に神様案件なのかな?


《恐らくはそうでしょう。こちらのアカシックレコードにアクセスできれば、詳しいことも読み取れるのでしょうが》


 うん。世界が違うからね。コアは地球のアカシックレコードにはアクセスできないんだ。


 それはさておいて。


「コア」


《なんでしょう?》


「あの祠って、修繕できる?」


《残念ながら干渉ができません。ですが、纏わりついている蔦や、周囲の雑草の排除は可能です。

 祠自体はかなり痛んではいますが、瓦が割れたり、木材が腐っているわけでもないので、暫くは問題ないとおもわれます》


「……ちなみに、予想でどのくらい?」


《100年ほどかと。祀られているモノの影響でしょうが、普通の建造物よりも頑健であるようです》


 十分だな! さすが神様のおわす場所……でいいのかな?


「それじゃ、蔦と雑草の排除だけおねがい」


 たちまち雑草が排除され、祠は朽ちる寸前の雰囲気から、趣のある年月を感じさせる祠へと変わった。


「せっかくだから、お供えをしておこうか」


 私はストレージから量販店で買って来たシュークリームを取り出した。1個100円でお釣りが来る格安のものだ。


「そういや、触れんのかな?」


 手を伸ばし、祠に触れる。うん。問題なく扉を開けられた。


 祠の中の中央には円形の金属板。いわゆる鏡が置かれてあり、その前に小さな座布団の上に置かれた黒っぽい石ころ。


 これもご神体かな? なんか埃被ってるけれど。


 本当はダメなんだろうけれど、どうにも我慢ならないから手に取って、ハンカチで埃を払い、かるく磨いて元に戻した。


 やってから気がついたけど、これ、罰当たりな行為な気が……。大丈夫だよね?


 左右には狐の置物。どうやら稲荷様由来の祠のようだ。どの系統の稲荷神社なのかは分からないけれど。


 えっと、伏見と笠間と……あとどこだっけ? 結構、系統ごとに違っていたような気がする。良く知らないけど。


 このお狐様も簡単に埃を払っておこう。


 最後に参拝。


 普通に二礼二拍一礼でいいかな? 今度は、きちんとお供えに稲荷ずしをもってこよう。同じ量販店の180円のやつだけど。


 かくして、私はパンパンと手を叩き、深く一礼してその場を後にした。


 ただ気まぐれから参拝しただけなのに、なぜか心の中に鬱屈して溜まっていた澱のようなモノが軽くなったような気がした。


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