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私、川守めぐる(10)は、4度目の人生を歩んでいる_2


 私、川守めぐる(10)は、4度目の人生を歩んでいる。


 えぇ、召喚されたよ。


 バスから降ろされ、まるでテロリストに拉致された人質のようだよ。


 異世界転移ものによくある、特典の言語がわかる能力なんてものはないから、連中がなにを云っているのかはわからない。


 ……いや、前回までは分からなかったんだけれど、今回は分かるな。


《いまは色々とサポートが可能ですから。こちらの世界のデータは全て揃っています。当然、言語データも。彼らの話している言語【フォラゼル語】の翻訳はお任せください》


 知らなかった方が良かったんだけど。


 そのフォラなんたら語で耳に入って来るけど、ちゃんと理解できるんだよね。翻訳されているわけじゃなく、それこそ母国語みたいな感じで分かるというね。


 コア、頑張り過ぎじゃないの?


 で、連中の話していることというと、ロクでもないことだ。


 なんてことはない、私たちは賭けのコマのようなものとされるみたいだ。正確には、使えそうな者だけを確保して、それ以外は娯楽の為に使い潰そうというわけだ。


 一種のデスゲームかな? 完全管理下にあるダンジョンの深部に放り込んで、誰が真っ先に死ぬかとか、誰が生き残るかとか、そんな感じの賭けをするらしい。もちろん、私たちが逃げ惑ったり、仲間割れしたり、モンスターに殺され喰われる様を、呑気に食事しながらケラケラ笑って鑑賞するようだ。


 なにせあからさまに品定めしてるのが聞こえるからね。私たちが言葉を理解できないと思って。


 野蛮人なんて意味合いの言葉も出て来てるな。野蛮なのはお前らの方だよ。


 そんなこんなで、使えると思われたであろう者数人を除いて、私たちはゲームのコマとしてダンジョンに放り込まれた。


 さてと、目的はコアを拾うことだ。ちょっと進めば、犬の形をしたトカゲと出くわして、クラスメート……えっと、誰だっけな。江崎だっけ? 小心者の腰巾着のくせに、私をいじめるときだけは威勢のいいゴミ。そのゴミにトカゲ犬に向けて蹴倒されたんだっけ。「お前が餌になれ!」だったかな? そんなことを云われたんだ。


 あ、今回の人生では、殴られたりしてやるのは嫌だから、全部【現実改変】を使って、いじめられたという事実はそのままに、身体的な実害を回避して過ごしたよ。だから無駄に怪我をすることもなく、被害は物品のみで済んだよ。


 放り込まれた薄暗い洞窟の中を固まって進む。もっとも私は、ちょっと離れて進む。


 うん。ここに入るのは3度目だ。道も……多分一緒だね。


 やがて前方から悲鳴が聞こえ、先に進んでいた皆が逃げて来る。


 トカゲ犬と接触したみたいだ。


 ここで突っ立ってると、また江崎に蹴飛ばされるから、自分からトカゲ犬の方へと進もう。


 逃げて来るみんなとすれ違い、私は小走りに進む。


 トカゲ犬と接敵。


 【現実改変】を使って、私を無視させる。私を気にも留めない現実に改変する。


 トカゲ犬の隣を問題なくすり抜けて、おぼつかない記憶を頼りに奥へと進む。


《暗視ゴーグルをストレージに追加しました。ご利用ください》


 え、作ったの? DPを無駄にしてない?


《召喚される際、エネルギーを大量に回収したので問題ありません。また、混雑した場では領域展開をしていましたから、周囲の者からも継続的にDPを補充できています》


 抜け目ないね。ダンジョン領域の展開とかDP使いそうだけれど、そうでもないの?


《多少消費しますが、それ以上に回収できれば問題ありません。もちろん、現在は展開していません》


 コアの話を聞きながら、手を突き出すように何もない場所に手を突っ込み、そこから暗視ゴーグルを取り出す。


 ……ゴツイな。なんか、レンズが4つあるカニ眼鏡みたいなんだけど。どうやってつけるんだ?


 岩肌の光る苔の無いよりマシな明かりを頼りに、なんとか頭に装着する。


 なんかヘッドギアみたい。……うん、私がまだ10歳児でちっこいからか、どうにもサイズが……。


《調整します》


 あ、できるんだ。お願いね。


 途端、きゅっと、ズレ落ちそうだったゴーグルが私の頭にフィットした。


 おぉ、暗かった洞窟内がちゃんと見える。……世界が緑色だけど。


 コア、自分を見つけたら教えてね。世界が緑で見分けがつかなさそうだからさ。


《了解です》


 躓かないように注意しながら、洞窟を進む。


 2度目の時は慌てて走って逃げたけれど、その道中にモンスターと遭遇することはなかった。とはいえ、今回もそうなるとは限らない。


 同じように走れば大丈夫なのかもしれないけど、下手に音を立てて進むのも怖い。


 さっきから悲鳴とか聞こえてきているけど、そんなのは無視だ。


 あ、そういえば私、ゲームのコマとして監視されてるんだよね?


《問題ありません。できうる全ての隠蔽魔法を用いていますから、私たちを認識している者はいません。もちろん、召喚直後から行っていますので、誰も私たちの存在に気付いていません》


 本当、コアは心強いな。


 多分、私ひとりでずっとループしてたら、その内精神を病んでたと思うよ。


 警戒しつつ進み、やがて、あの私が落っこちた崖? にまで辿り着いた。そこはひろいドーム状の場所。ゲームであれば、確実にボスエリアとでもいうような場所だ。


 そんな開けた場所の中間くらいの場所に私たちは立っていた。ネコ走りみたいな足場がそのドーム状のエリアを一周しているようだ。


《みつけました》


 お、あった? どこ?


《このほぼ真下です》


 そういや、私、ここを転げ落ちた場所で拾ったんだっけね。


 辺りを見回す。


 このネコ走りを伝った先にも、ここと似たような横穴があるな。正直、この下はボスエリアで、2度目の人生で【理核(ダンジョンコア)】を拾った時に何も起こらなかったのは、端っこだったからじゃないだろうか?


 それに、ここがダンジョンなら、行ける場所は行っておきたい。


《できれば、先に私の回収を。この程度の高さであれば、現状なら問題なく行き来できます》


 ……。


 は?


 え? いや、私はいつのまにそんな超人少女になったの!?


《この程度の高さでしたら【落下制御】で十分降りられますし、登る際には【浮揚】を掛けた後、思い切り地面を蹴り、その後、斜面を駆け上がれば問題ありません》


 そんな忍者みたいな事をしろと。え、できんの?






 ……できたよ。自分でもびっくりだよ。あらためて魔法凄いなって思ったよ。


 拾った【理核】はストレージに入れてと。


 えっと武器はどうしよう? モンスターとかいるだろうし、さすがに素手だと無理だよ。魔法だって使い慣れてなんかいないから、それで戦うのも無理だけど。


《日本のサブカルチャーは素晴らしいですね》


 突然どうした!?


《こちらの世界にはない発想に溢れています。いえ、不確かな魔法を確かなものにせず、投げ捨て、科学を発展させた先に生み出したものを、回帰とばかりに魔法を組み合わせた代物をフィクション上とはいえ生み出したのです》


 いや、本当にどうした!?


《というわけで、マスター、こちらを》


 私の手にソレが現れた。


 ……。


 これを絶句というのか? 違うな、呆れてものも云えない、っていうほうが確かだ。


 小さなラグビーボールみたいな形状の代物に銃のグリップがくっついたもの。そしてその先端はにゅいーっと延びた突起になって、先っぽが球状になっている。そしてそのにゅいーっと延びた突起の部分には、まるで貫いたかように円盤がみっつ並んでいる。

 尚、ラグビーボール状の本体はリベットがこれみよがしに打ち込まれている。鋼板を繋ぎ合わせているわけでもないのに。尚、そのリベットに沿って、真っ赤(だと思う。なにせいまはみんな緑色だ)なラインが横一直線に塗られていた。


 なにこの、白黒テレビが主流だったころの特撮モノに登場しそうな光線銃は。


 レトロどころかある意味骨董品な玩具(おもちゃ)じゃないの? えらく軽いし。振るとカラカラと音がしそうだよ


《光線の替わりに雷撃を撃ちだす光線銃ならぬ雷線銃です。このダンジョンに存在するモンスターは雷撃に対する耐性などありませんから、それ一挺あればこのダンジョンでは無双できます。少なくともザコ相手には》


 さすがにボスは無理なのね?


《馬鹿げた耐久力を持っていますから。討伐するのにかかる時間を考えますと、倒す前にこちらが倒されます。攻撃を避け続けるのは不可能です》


 ……範囲攻撃?


《はい。ブレスに耐えきることができません。直撃を耐えたとしても、周囲の環境が一時的にとはいえ灼熱状態となっていますので、外皮の保護はできるとしても、呼吸をした時点で肺が焼け行動不能となります。当然、その修復に時間がとられますので、その間に止めを刺されるでしょう》


 お、おう。


 ブレスの直撃に耐えられんのかい、私。


 考えたら私、歩くダンジョンみたいなもんだしね。いや、でも、普通に怪我とかはするしな。物理耐性は普通の子供のままってことか? いや、そうじゃなくて魔法的なバリアを張れるってところか。






 よし、それじゃちょっとダンジョン探検をしてこよう。


 目的も達しているし、死んじゃっても大丈夫だしね。


























 いや、痛いのは嫌なんだけどさ。


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