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私、川守めぐる(10)は、4度目の人生を歩んでいる


 私、川守めぐる(10)は、4度目の人生を歩んでいる。


 うん。順調だよ。


 卒業式の対処法もしっかり考えたから、多分大丈夫。あのおばさんには塀の向こうに入ってもらうことにするよ。殺人未遂って、刑期はどのくらいだろ? 執行猶予ってつくのかな? そもそも、怪我とかしないと殺人未遂にならないんだっけ? まぁ、そこはなるようにしかならないか。


 もちろん、その前の召喚イベントもちゃんとやるよ。


 ほら、能力が欲しいからね。


 能力だけれど、どうも“願ったこと”に近しい内容のものが能力として得られるみたいだ。


 召喚されて世界を渡るわけだけれど、その渡る時になにかを得るんだと思う。あの光がなんらかのエネルギーで、それを浴びたことで召喚されている私たちのなかにそれがはいっているんじゃないかな。で、願うことで、そのエネルギーが能力として形となっているのではないかと。


 他の連中がどうなっているのかは分からないけど、なんか超人みたいになってた男子が何人かいたから、なにも願ったりしなければ身体が強化されるんだろう。


 私の場合はと云うと――




 1回目:こんな人生嫌だ。やり直したい。あの異常な状況で、もっと酷いことになると思った私は、そんなことを願うというか、嘆いていたんだ。で、結果【ふりだしにもどる】を得たんじゃないかな。


 2回目:この時はやり直すというよりは、召喚される現状をどうにかしたいと考えてた。結果【現実改変】。いまにして思うと、なぜ意地になって林間学校に参加したんだろ? 私。


 3度目:人生をやり直すなんてことが起きている以上、なにかしらの能力があるはずだと仮定。それを把握できるようにと、いわゆる鑑定能力を求めた結果、【鑑識眼】を得た。




 こうなるともう、狙って能力を得られるってことだよね!


 で、4度目の今回は、ちょっと切実になりそうなので、それの対処をしようと考えた。


 うん。記憶が引き継がれているわけだけれど、人の脳みそって、覚えられる記憶、エピソード記憶だっけ? それって聞いた話だと140年分が限界らしいじゃない。

 この調子だと、確実にとんでもなく長く人生を繰り返すだろうから、それを覚えておくには脳の記憶容量をどうにかしないといけないと思ったんだよ。


 どうにかする必要がないって、ほぼ直前で分かったけれど。


 【理核管理者】って称号があったじゃない。あれがなにか分かったんだよ。


 2度目で拾った光る石ころ。てっきりウラン鉱石と思っていたんだけれど、あれ、全然違ったんだよ。あの魔法のある世界特有の石で、それも超特別なもの。


 長い長い時間魔力に晒された石は、それ自体が強大な力を得て自我のようなものを芽生えさせるのだそうだ。


 なんでそんなことを知っているのかって? 当人……いや当石から聞いたんだよ。


 あの石。拾って胸の上に置いたところで私は死んじゃったわけだけれど、なんか一緒に次の人生についてきたみたいなんだよ。触れた時点で契約したことになるらしくて、直後の【ふりだしにもどる】のせいで、どうも私の魂? と一体化しちゃってるらしい。


 で、【理核】っていうのは、いわゆるダンジョンコア的なものなのだそうな。


 私が放り込まれたあの場所がダンジョンの深部であることは知っていたけれど、ほぼ最奥だったみたいだね。もっとも、私が拾ったのはあのダンジョンのダンジョンコアではなく、そこで新たに生まれたばかりのダンジョンコアだったようだ。


 それが今頃になって分かった理由は、ダンジョンコアの自我がまだ赤子みたいなもので、3度目の人生を私と歩むことで、日本語を覚えるとともにはっきりとした自我を得たのだそうな。


 ついでにいうと、3度目の召喚の時に、能力の元になっているエネルギー……魔力? を大量に掠め取ったらしく、ダンジョンコアとしてはかなり強力になっているとのことだ。


 4度目の人生の開始後しばらくしてから初めて対話して、現在に至っている。


 そんなわけで、記憶容量に関してはこのダンジョンコアのおかげでほぼ無制限になっているのだ。なんというか外部記憶装置みたいなのがくっついているようなものなのだそうな。


 さらにはファンタジーものの定番のアイテムボックス的なものも標準装備だ。


 なんだか一気に大変なことになったぞと、思わず冷汗を流しそうな有様の顔をしていたせいか、産婦人科の年配の看護師さんが慌てふためき、ちょっとした騒ぎになったのは嫌な思い出だ。


 ……まぁ、看護師さんも、赤ん坊の驚愕の真顔なんて愉快なものを見ることができたのだから、珍しいものを見たと、話のネタにでもしてもらいたいものだ。


 そうして母の離婚騒動を経て、母の田舎へと引っ越して落ち着いたころ、さらなる驚きの話をコアから聞かされることになる。


 私、魔法を使えるらしい。魔女っ子……だと。いや、ちがう、魔法赤さんか。語呂が悪いな。


 ダンジョンコアといえば、ダンジョンを作ってそこを管理するモノ。モンスターを配置して、お宝を設置することで獲物を呼び寄せる……食虫植物ならぬ食人洞穴だ。


 ……苦情がきた。食人ではなく、入って来る生物ならなんでもいいらしい。人がもっとも効率がいいってことだけど。

 そもそも私と一体になったコアは、そんな経験も無いわけだから、そんな害獣みたいな云い方をすれば、そりゃ怒るよね。ごめんよ。


 とにかく、そういうわけで、魔法と物品関連は身につけたり手に入れたりすることができるようになった。

 まぁ、それらを作り出すのにエネルギー的なもの、分かりやすくいうならばDP(ダンジョンポイント)が必要となるわけだけど、それは例の召喚の際に世界の間に揺蕩っているエネルギーの海から掠め取っているため、かなり膨大な余裕があるとのことだ。


 とはいえ、節約はするけれど。


 さて、それでだ――


「次の召喚の時には、なにを能力としてとったらいいと思う?」


《手に入れることの不可能なモノとなりますが、下手なものを選ぶと問題になりますね。【転移】系がよろしいのでは? いえ、それだと転移先に問題があった場合事故が起こりかねませんね。【転移】は次々回として、安全確認用に【千里眼】あたりを得ては?》


「あれ? 【千里眼】は作れないの?」


《基本的に能力系の技能は作成不能です。【千里眼】は能力系になります。技術系にはそれに類するものはありません》


「そっか。でも【千里眼】か。どうせならマップ見下ろしタイプのほうがいろいろと便利そうだけど、それだと【転移】補助には抜けがでそうだなぁ」


《痛し痒しですね。座標認識の難易度的には後者の方が格段に楽ですが、認識できない部分、死角が多分にでます》


「そうなんだよねぇ。【千里眼】の扱いに慣れるよう頑張るか。……【空間】系の魔法で、両方賄えないかな? できるならそっちを願うけど」


 実のところ、時間とか空間を操るような魔法は存在しない。どうやらそれは完全に神様の領域みたいだ。でも、能力としては、転移や転送、限定での時間すっ飛ばし(過程を飛ばして結果を得る)みたいなのはあるみたいだ。

 前者は読んで字のごとく、後者は……煮込み料理の短縮?


 ハードルとしては【空間】系の魔法のほうが低いだろう。まぁ、そんなものがあればだけど。


《時にマスター。お願いがひとつ》


「ん? なにかな?」


《召喚された際には、できれば“私”の回収をお願いしたいです》


「へ?」


《あの時点では単なる迷宮(ダンジョン)管理ツールでしかありません。回収し、私の子機として利用しようかと》


「……え、なに? どっかにダンジョンでもつくるの?」


《さすがにそれは問題では? やってみたくはありますが》


「回収するから、複製できるか確認してみてよ。できるならどっかに……土地でも買ってアトラクションとして作ってみる?」


 さすがに他人の土地に無断で作るわけにはいかない。かといって、ダンジョンを運営しているのが私たちだというのが知られるわけにもいかない。


 まぁ、誤魔化すことはいくらでも出来るけどね。






 よし。明後日からは林間学校だ。


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