私、時永めぐる(15)は10度目の人生を歩んでいる
私、時永めぐる(15)は10度目の人生を歩んでいる。
やっと高校生になったよ。ここに到達するまでに、100年以上掛かるってどうなんだ?
まぁ、そのおかげもあってか、人生がある意味イージーモードになってるけど。いや、イージーモードとは違うか。どちらかというと強くてニューゲームだ。
私は晴れて高校生となった。うん。受験、楽勝だったんだよね。楽勝どころか、あまり悪目出ちしないように、入学試験の点数調整なんてこともしたくらいだ。
いやさ、ダンジョンコアと融合していることに加え、人生の繰り返しのたびに学業に関しては独学でやれるだけやっちまった結果だ。問題があるとすれば、歴史だけだからね。
全教科満点とかやらかしたら面倒なことになるのは明白だしね。だから適当に答えを間違えて入試を受けるなんて、舐めプをしたんだよ。
まぁ、おかげで記録上は凡庸な一般的な女子生徒となった。
あとは、定期考査でうっかり点数調整を忘れないようにすればいいかな。
試験で平均70点~80点の点数をとっておけばいいだろう。
さて、修学旅行の後はどうなったのかを話そう。
私たちはその後、問題なく帰国した。私たちは被害者ではあったけれど、“巻き込まれた乗客”とされたからか、特に聴取などもなかった。
公式的には“特定の何者かを狙ったテロ”とされたが、その特定の人物が不明ということになっている。
乗客になんらかの重要人物でもいれば良かったんだろうけど、乗っていたのはビジネスマンと観光客だけだったからね。
なんだかこのままだと面倒なことになりそうだから、私がそれをどうにかした。
ハイジャック犯共が狙っていた人物が、直前にキャンセルしたことにしたよ。
いや、丁度良く1便後の香港行の便に、とある大企業のCEOが乗ってたんだよ。もちろん、その人物は予定通りのスケジュールだったんだけれど、そこをちょちょいと現実改変して、私たちと同じ便のはずを遅らせたことにしたんだよ。
さらに、この企業が中東で雇用に関してちょっと問題を起こしているということにした。簡単に雇用と給与の問題があることにしておいた。実際、若干揉めてもいみたいだし、ハイジャック犯は中東の人だったからね。丁度良かった。
だからついでにハイジャック犯の一部を、その企業の末端に加えておいた。
まぁ、これで世間一般はどうにか誤魔化した。た、多分、大丈夫だと思う。この変更後の“事実”が、帰国した翌日に報道されていたからね。
でも、実際の所は私を殺すのが目的だったわけだ。
……飛行機爆破とかだったらヤバかったかな? 爆発で私がどうにかならなければ、たとえ爆破が成功してもなかったことには出来るけれど――
うん、今後、もし飛行機に乗ることがあったとしたら、“もし爆発物が仕掛けられているのなら、それらはすべて不発である”と現実改変することを忘れずにしよう。
さて、私を殺そうとした連中だけれども、なんか世界的な裏組織? みたいなものであったらしい。
【人類解放戦線】とかいう、どうにも中二病臭い名称の組織。
なにから人類を解放するんだよ。妖怪? いや、それならなんで私を殺そうとするんだよ!?
「これまでの女神様の同行から、殺害、或いは拉致しての利用を決めたようじゃな」
……は?
玉様の言葉に、私はまさに目が点になった。
いったいどういうことよ!?
詳しく聞いたところ、私を付け狙っている組織は複数あるとのこと。
大きなところは次の3つ。
【人類解放戦線】、【楽園教会】、【反オカルト協会】。
【人類解放戦線】は昔っからあるとある宗教から派生した過激組織。
【楽園教会】は新興の人類原理主義の宗教団体……ってことだけれど、実際はというと、三角頭巾でおなじみな某秘密結社? 同様に白人至上主義の集まり。
【反オカルト協会】は企業の集合体みたいな感じ? フリーメーソンだっけ? 貴族主義を謳った組織の後進組織だったかな? 陰謀論なんかではちょくちょく出て来る、人類を裏で牛耳っているなんていう噂の組織。そこの分派だか支部だからしい。
いずれも、“オカルトをぶっ潰せ! (オカルトは俺たちだけが利用する!!)”
って組織とのことだ。
で、なんでそんなところに目をつけられたのかというと。
「女神様はこれまで死もたらす事件を回避してきたであろ? その数4回。いじめ主犯の母親による絞殺未遂、刺殺未遂、ストーカーによる撲殺未遂、実父による人身売買未遂の4度。それを運良く回避した、女神様的には回避できたことにしたわけじゃが、それを連中は怪しんだのじゃ」
えー……。
「悪運が強いにも程があるということじゃな。加えて、人身売買組織殲滅の際には鬼と天狗が出張ったであろう。それもあって、女神様は妖側であると認定されたようじゃ。連中としては、容易く始末できそうな小娘ということで、都合のいい実績作りの獲物ということじゃな。
まぁ、捕えて有用な力があるならば、利用しようとも思っていたようじゃが」
利用って、殺害じゃなくて誘拐拉致を狙ってたところもあったってこと?
「【楽園教会】は共闘した他組織をだし抜いて、誘拐するつもりであったようじゃ。もっとも、実行犯はそれを無視して殺害に走ったが。女神様を撃ったあの男女がそうじゃ」
あぁ、あの東ヨーロッパ人、だっけ? あいつらか。銃を撃とうとしたところで、手を振って笑ってあげたら、びっくりしてたよ。
「なにをしておるのですか、女神様」
いやぁ、せっかくだから煽り散らかしてやろうかと思って。
「次郎坊から聞いたが、連中、壊れたそうじゃぞ」
は? 壊れた!?
「女神様のその行動はいま知ったのじゃが、それに加えて銃で撃たれてもケロリとしていたわけであろ? 連中、手を出してはならない存在に手を出したと、パニックを起こしてそのままとのことじゃ」
また大袈裟な。
「連中は女神様の出自から調べておる。普通の人間でしかないと知っておるのだ。おかしな能力を持っているかも知れない、という推測があるだけでの。
そんな小娘が、銃で狙われ、撃たれたにも関わらずに動ぜずにおる。混乱もするじゃろうのぅ」
……実は撃たれた後、足元に落ちた弾丸を拾って、こう、指を左右に振ってみたんだよね。ちっちっちっ、ってやるみたいに。某映画の殺人アンドロイドの仕草を真似て。
連中、取り押さえられながら、なんだか泣きそうな顔をしてたけど、あれは鈴ちゃんに捕まったからじゃなくて、私のせいだったのかな?
そういったら、玉様が疲れ切ったような顔を見せた。
さてさて、あれから1年程度経ったわけだが、【人類解放戦線】は狐狸連合の傀儡組織に成り下がった。
橋姫様の送り込んだスナッチイミテーター利用し、天狗さんたちが情報収集。それに合わせて工作員として狐狸連合がスナッチイミテーターを結構な数を送り込んで、そこの指導者を入れ替えたそうだ。
指導者は有体にいって人間のクズだったということで、入れ替えた本人は世界から追放したとのこと。
うん。三吉さんが異世界に放り出したらしい。三吉さん、私と同じく【異空門】を身に着けたからね。
あっちは過酷だぞ。私がそうして来ちゃったから。そもそも言葉も通じないだろうし、文明に毒されまくったこっちのお偉いさんが、あっちで生きていけるのかな?
ま、森でも海でも行けば、食べるものは一杯あるさ。食べたそれが安全であるかどうかは別としてね。
ってことで【人類解放戦線】は、厄介な人間を集め観察する檻に成り下がった。【楽園教会】も同様に工作を進めているみたいだけれど、こっちは指導者たちの本性を最高のタイミングで暴露する方向で動いているみたいだ。
妲己さんと次郎坊さんがすごい楽しそう。
というか、狸さんたちが狐さんたちよりもヤベーと判明して、私は冷汗を掻く羽目になった。
いや、残虐とかそういう方向じゃないんだけれど、こう、ペテンの方向が……。
騙されたと理解させずに破滅させるとか、どんだけ巧妙なの? いや、美学の違い? どういうこと? 狐さんたちはペテンを分からせる方向でやらかしてるってこと?
つか、どっちも始末に悪いわ!!
おぉう、もう。大丈夫なのかな、これ。やらかし過ぎて、どっかで戦争勃発とか勘弁だよ!?
「妾が監視しておるし、なにより橋姫が目を光らせておるからの、取り返しのつかん状況には陥ることなどありゃせんよ」
……まぁ、最悪そうなっても、私がなかったことにするよ。
さて現在の私はというと、女子高生生活を満喫しつつ、玉様のところや橋姫様のところへ、ちまちまとお邪魔する生活だ。
なんだか本来の家族よりも長く一緒にいる有様だよ。若干問題かな? でもまぁ、家族仲に問題が起きているわけではないから、大丈夫だろう。
ただ、若干問題というかなんというか、どうしたものかと悩んでいることがひとつ。
義兄のことだ。
いや、なんというか、母と同様にやたらと私を心配している。さすがにトラブルに巻き込まれまくっているからね。そうなる気持も分からなくもないんだけれど。
あ、そういえば、実父が私に接触してきたことも知っていたよ。先生が連絡してくれたらしい。
それもあって、毎日夜9時になると電話がかかって来る。
うーむ。こっちで無事にやっているんだけれどなぁ。
そして今更ながらに思い出したことがひとつ。我ながら薄情だなと思って、自己嫌悪したことだ。
うん。本当に今更なんだけれど、伯父さんと会ってないよ。赤ん坊の時のあれ以来顔を合わせていないよ。
あまりの薄情さに思わず顔を青くしながらも、おじいちゃんとおばあちゃんに訊いたさ。
そうしたら、伯父さん、仕事で海外赴任中らしい。
「一応、家を継ぐとはいっとったがなぁ」
「どうなりますかねぇ」
「まぁ、ダメなときはそん時だ」
「めぐるちゃん、継いでくれる? 別に農家は続けなくてもいいのよ」
お、おぉう?
いや、そんな簡単に。つか、伯父さん、きちんと連絡とかしてないのかな?
……母の顔を思い出す。
そういやお母さん、モデルの仕事をはじめるって決めて、家を飛び出してちゃったんだっけね。で、あれこれあってきちんとモデルデビューできないまま私を作っちゃってから家に戻ったってわけだし。
無鉄砲か考え無しかって感じだったんだよねぇ。私を抱えたまま伯父さんに説教されてたから、事情はよく知ってるんだ私。
それでさすがにいろいろと懲りて、どういうわけだか私に対してヤンデレになっちゃったわけだけど。
その母の兄だ。似たような気質な気がする。
自身がそうだからと、厄介なことになった母を説教したんじゃなかろうか。
まぁ、時永家を継ぐことに関してはやぶさかではない。
とはいえ、正式な跡取である伯父さんがいるんだから、話半分で聞いておけばいいだろう。
そういえば、伯父さんって結婚してんのかな?




