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私、川守めぐる(0)は、4度目の人生を歩んでいる


 私、川守めぐる(0)は、4度目の人生を歩んでいる。


 ……。

 ……。

 ……。


 あぁ、うん。またなんだ。


 3度目の人生? 天寿を全うできなかったよ。


 私は未来()の人生を知らなかった。私が未来を知っていればな……。まぁ、ロクでもない人生だったよ。


 ……。


 畜生! 死んだよ! 殺されたよ! 昔のゲームの台詞をパロって逃避してどーすんだよ!


 なんなんだよあのババア!


 ぬがぁっ!!


 ……。

 ……。

 ……。


 ふぅふぅふぅ……うん? なにがあったのかって?


 簡単なことだよ。小学校の卒業式の日に殺されたんだよ!


 式がはじまって、卒業証書授与。その時に消えたクラスメートの卒業証書の授与も行われた。担任も消えたわけだから、私が代表で受け取ることになったんだよ。神隠しに唯一()()()()()()()()()生徒だからね。


 個人的にはもの凄く不愉快だったけれど。なんで私があいつらの代理をしなくちゃいけないんだよ。私が連中にいじめられてたのは知ってんだろ!


 どんな嫌がらせだ!


 しかもそのあと、私が連中の卒業証書を受け取ることについて、変な美談にしやがって、くそ校長!


 そんな風に不満だったんだけれど、ある意味、同じように考えていた人物がいたんだよ。


 卒業証書のはいった筒を抱えて、母親と一緒にてくてくと校門に向かって歩いていたら、いきなり中年の女が立ち塞がったんだ。


 誰かと思ったら、いじめっ子主犯格の母親。「お前がいなくなればよかったんだ!」って騒いで、私の首を絞めてきたあの女だ。


 騒動冷めやらぬ中で、私がひとりっきりの教室で自習(なぜか他のクラスに編入されなかった)をして下校ってときに、校門で殺されかけたんだ。

 幸いと云うか、まだマスコミが学校まで取材に来ていた中だったから、私はすぐに助け出されたけど、この中年女はその姿が生中継で報道されたもんだから大炎上したんだ。


 そのあとどこぞに引っ越したって聞いていたんだけれど――


 その中年女がいきなり現れた。あからさまにニッコニコな作り笑いを浮かべて。卒業生の親同士の会話でもしているかのように。


「卒業おめでとう」


 なんてことを云って来たもんだから、びっくりしたんだよ。


 うん。一瞬でも、驚いてしまったのがいけなかったのだろう。次の瞬間には、私の首に出刃包丁が突き立てられてた。


 隠し持っていた出刃包丁を一気に突き出しグサリ。


 首を喉元から左へ切り裂かれて終わり。頸動脈、だっけ? 多分、そこが切断されたんだろうね。一瞬、ブシュって感じで血が噴き出すのが分かったよ。隣に立ってたお母さんの服を血塗れにしちゃったよ。


 で、私の3度目の人生は終わり。そして4度目だ。またしても赤ん坊でお尻を引っ(ぱた)かれたところから始まった。


 また最初っからだよ。


 それでさ、とりあえずひとつ分かったことがある。


 即死する事態になると、スキルなんて使えない。


 いや、当たり前だよ。なんで今更そんなことを自覚してんだ私。


 使い慣れていなかったっていうのも原因かもしれない。


 いや、スキルなんだけどさ、異常に強いというか、反則レベルなんだよ。


 3度目の人生でちょこっと使ってみて――


「あ、これアカンやつや」


 と思って、よっぽどじゃない限り使わないことにしたんだよね。


 私のステータスだけど、こんな感じだ。



+--------------------------+

 ■高野――


 年齢:0(32)歳 種族:人間(モンゴロイド[大和民族])

 称号:【理核管理者】

 状態:良好


 技能:【調理(初級)】【算術(初級)】


 能力:【ふりだしにもどる】【現実改変】【鑑識眼】


+--------------------------+



 名前がついていないのは、まだ役所に届けがされてないから確定していないってことなのかな? まぁ、また“めぐる”か“あゆむ”になるんだろうけど。でも“あゆむ”は1度目の人生のときだけで、2度目3度目が“めぐる”に変わったのは何故だろう? まぁ、考えてもわからないか。多分、名前の候補のひとつだったんだろうな。


 称号。とりあえずどうでもいい。……いや、ちっともよくないけど、いまはいい。なにしろなにがなんだかで、さっぱりだからだ。


 技能は……これ、前世で覚えた事かな? 調理っていっても玉子焼きと味噌汁くらいだけど。そもそも、お母さんのお手伝い程度だし。算術は……もしかしてそろばん? まぁ、習い事的なものが技能に入るんだろう。


 で、問題なのが能力だ。


 私が最初に死んだときに赤ん坊に戻ったのは、この【ふりだしにもどる】のせいだと思う。もしもこれ、どうやっても死ねない(?)能力だとしたら、呪いでしかないんだけど。絶対に途中で生きるのに飽きると思う。


 変な将来を目指したりして、路頭に迷うとかいやだしね。概ね堅実な人生を歩みたいし。そうなると滅多な冒険的な人生は選べないね。結果、同じような人生を延々繰り返す羽目になりそうで怖いよ。


 まぁ、これに関してはあれこれ悩んでも仕方ない。そして大問題なのがもうひとつ。【現実改変】。これ、完全に壊れ性能の能力なんだよ。


 まぁ、これのおかげで異世界から逃げられたんだけど。


 どういうことかというと――




 1回目:死に戻り(鱗に覆われたでっかい犬の餌にされた)。


 2回目:自身の能力の使い方がわからず死に戻り。


 3回目:異世界転移の直後、“転移に巻き込まれていない”と現実を改変した。



 ――ということだ。


 最初の召喚で【ふりだしにもどる】を得て、2回目で【現実改変】を得たんだろう。


 そしてこの【現実改変】は、事態を思い通りに改変するっていう、とんでも能力だ。とはいっても、なんかMPみたいなものがあるみたいで、大掛かりな改変はできないみたい。細々とちょこっとしたことなら出来る感じだ。


 異世界からの帰還は、私がいてもいなくても同じと思われていて、改変が容易かったんだろう。


 なにせ“トイレに行っていて、バスに乗っていなかった”ってことにしたんだから。


 ……いじめられっ子万歳? いやだなぁ、それ。


 ただこの能力、洗脳っぽいこともできるみたいでね。一度、やたらとしつこいマスコミの人の取材対象を私から近くにあった電柱に変更したんだよね。


 ……とんでもなく気味の悪いことになった。幸い、永続的に改変はできないみたいで(MP不足?)、5分くらいで元に戻ったけど。


 怖くなって逃げて、隠れて見てたんだよ。


 それからこの能力はできるだけ使わないことにした。特に人に対しては。落として割ったお皿を落とさなかったことにしたりとかはしたけど。


 ただ、この能力はつかうととんでもなく疲れてお腹が減るんだよ。まぁ、壊れ性能だもの、代償も大きいということだ。寿命を削るとかじゃなくてよかったよ。


 そして3回目で手に入れたのが【鑑識眼】。【鑑識眼】っていうのは、骨董品の真贋の目利きとかの意味らしいけれど、ここではゲームとかで云うところの【鑑定】だ。

 この【鑑識眼】、使うとシェードグラスみたいなのが目の前にでて、そこに白抜きでそれについて表記される。人……というか、動植物なら、いわゆるステータス画面みたいに。物品なら、それがなんであるかの表記され、さらに詳細をつめると、物質の構成やらなんやら、いらん情報まででてくるような高性能だ。


 ……裏技で、試験につかうと答えが全部わかるというね。なんとなしにやってみたら、いきなり答えが埋まって噴いたよ。

 あ、見たのは一瞬だけだよ。慌てて能力を切ったから。でも何問かは答えをまともに見ちゃったんだけどね。


 ……そうだ、この【鑑識眼】ででたステータス画面にスキル名がでているんだし、これって更に詳細が見えたりしないのかな?


 赤ん坊特有のはち切れそうな手を画面に伸ばす。


 あ、タップしたらでてきた。まぁ、【鑑識眼】で自分を鑑定しているんだからそうだよね。


 【ふりだしにもどる】は予想通り赤ん坊からのやりなおしだ。パッシブスキルで、止められない。いや、止めると復活できないんだから、止めないけど。天寿を全うしたいし。……天寿を全うしても赤ん坊にもどるのかな? それはそれでキツイな。


 【現実改変】のほうは概ね思った通り。ただ能力の本質は、現実を改変するというより、過去を改変することで現実を改変しているとのことだ。


 ……え? ってことはなに? 歴史の改変ができるってこと? いや、やらないし出来ないけどさ。絶対にMP的なものが足りないから。


 うん。スキル関連はこれからいろいろと検証しよう。






 さて、それじゃ、12年後に殺されるのを回避するためにも、いろいろと頑張ろう。


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