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私、時永めぐる(14)は9度目の人生を歩んでいる


 私、時永めぐる(14)は9度目の人生を歩んでいる。


 さぁ、修学旅行だ。


 前回はここで私は死んだわけだ。


 ただ、今回は前回と違い、大分状況が変わっている。


 先ず、修学旅行の目的が土下座ではないということだ。前回は先生方も意見が真っ二つに分かれていたからね。

 つか、あの送り込まれてきた校長がおかしかったんだよ。


 でも今回はそんなことは一切ない。みんな玉様万歳な世界だ。まったくもって安心だ。


 ふたつめ。修学旅行先。これが変わっている。海外であることはかわらないけど。行先は香港だ。この世界線では英国領のままとなっている。……いや、中国、消滅しているからね、この世界線。代わりにモンゴルとロシアの領土が凄いことになってるけど、さらにそこに英国と米国の飛び地領がある状態だ。


 さて香港だけれど、ちょっと見てみたい場所がある。観光としてそこに突撃する気はまったくない場所だ。それは【九龍城】。違法建築の集大成みたいな、そんな場所だ。裏社会とかが蔓延ってたんだっけ? これまでの世界線では既に解体されてしまった場所だけれど、この世界線ではまだ生き残っている。


 ちょっと外観? っていえばいいのかな? 見てみたいんだよ。カオス建築の権化らしいから。


 まぁ、その為には、死亡イベントを回避しなくてはならないんだけれどね。


 問題は、前回同様の状況になるのだろうか? ということだ。


 なにせ行先も違うし、当然、飛行機の便も違ってくるわけだ。


 ここまで状況が違うのに、ハイジャックが起こるのかな? 一応調べてみたところ、前の世界線で搭乗した旅客便はこの世界線でも存在しているんだけれど。


 ハイジャック、起こるのそっちじゃいの?


 そんなことを考えながら、いよいよ修学旅行当日となった。


 空港から飛び立ち、暫し後――


 またしてもハイジャックが起きた。


 ……あぁ、これ、どうあがいても起こるイベントなんだね。コアは起きない可能性の方が高いと云っていたけれど。


 うん? 待てよ。


 これは私に一切関りの無い偶発的なことであるから、コアはこのハイジャックが発生しないと考えたわけだよね。


 でもこうして実際発生している。


 本来なら、ソウルへと向かう飛行機で起こるはずのハイジャックがだ。


 まるで、私を追いかけて来るみたいに。


 つまりだ。このハイジャック犯たちの狙いは私っていうこと?


 いやいや、さすがにそれは考え過ぎか。


 でもこれまでを考えると、初回のアレ以外は、みんな私を殺害目的として来たものばかりなんだよね。


 そもそも初回だけは偶然で、それがきっかけで私は【ふりだしにもどる】を手に入れたわけだし。


 2回目も似たようなものだから別枠として、以降は完全に私を狙っての殺人なんだよね。


 それを考えると、今回もそうってことになるんだけど――。


 さすがにこれは大袈裟すぎやしないかな? というか、なんで中東系の人が出張って来てるんだろう?

 アジア系だったら、こないだの暴力団関連って線があるけれど。


 いくら考えてもさっぱりなこの状況に、私はやや不機嫌な顔のまま堂々と席に座っていた。隣の大崎さんは、頭を抱えて身を伏せて体を震わせている。


 あぁ。まぁ、こんな状況になればこんな風になるのが普通だよねぇ。なんだろう。私は慣れたってことかな? そういや怖いって感覚を久しく感じてないな。


 そんなことを考えながらハイジャック犯を眺めていると、その側にいた乗客がハイジャック犯に飛び掛かった。そして暫しのもみあいの末発泡。


 私の正面には珠ちゃん。真横には空、そして斜め後ろには鈴という布陣だ。コアの指示により、跳弾が飛んでくるであろう場所に3人を布陣している。


 いるはずなのに――


「あいたっ」


 私の頭部、右斜め後ろ辺りに何かがぶつかった。


 肩に当たり、カツンと床に落ちたそれはコロコロと私の足元に転がって来た。


 それは弾頭? へしゃげてはいるが、サイズからして拳銃の弾丸だと思われる。


 ……は? 拳銃!?


 ハイジャック犯の持ってる銃はライフルだ。どうやって持ち込んだのかはさっぱりだけれど、かの有名なAKだ。


 私は右後方へと振り向いた。


 見えたのは、驚愕した顔で鈴ちゃんに取り押さえられている西洋人の男性。そしてその隣に座っている女性が私に向かって銃を抜いた。


 ちょっとちょっとちょっと、どういうことよ!?


 でも銃を撃つことは叶わず、空ちゃんに跳び膝蹴り顔面に喰らい、あっという間に昏倒してしまった。


 そしてそれはハイジャック犯を驚かせてもいた。


 その様子から私に発泡した西洋人と、絶賛ハイジャック中の中東人はお仲間ではなさそうだ。


 あ、なんかハイジャック犯と目があった。手を振りたく――って、なんで私に向かって発泡するの!?


 当然ながらその銃弾は私には届かない。


 ハイジャック犯には視えていないだろうけれど、私の眼前には珠ちゃんが立ちはだかっているのだ。


 銃弾は珠ちゃんに防がれ、そしてハイジャック犯は珠ちゃんの妖術で殴り倒され昏倒した。


「主様、ちぃとならず者共を制圧して来るぞ。鈴、空、ここは任せた」

「「いってらっしゃい」」


 息ぴったりだね、ふたりとも。そして珠ちゃん、顔が怖いよ。


 こうして、ハイジャック犯たちは制圧された。


 ……いや、誰が制圧したことにするの? これ、問題にならない?


 顔を引き攣らせていると、コアが状況を教えてくれた。


 昨今の飛行機は、旅客室側から操縦室へと入ることができないようになっているそうだ。いわゆるハイジャック対策のためとのことだ。


 なんとなく、それはそれで問題がありそうな気がするんだけど、もちろん、大丈夫なようにうまいことやっているのだろう。きっと。


 で、透明な状態であるからと、珠ちゃんはすっかり無双してハイジャック犯5名をのめして制圧した。


 ……コア、これ、私が現実改変して、乗客とCA協力して連中を制圧したことにしたほうがいいかな?


《それがよさそうですね。珠緒様が、玉藻様の名を使って強引に誤魔化す気のようですが。連絡して止めておきます》


 よろしく。それじゃハイジャック犯は、運悪く自慢のAKがジャムって使い物にならなくて、乗客乗員に飛び掛かられてそのまま制圧された、ってことにしよう。

 AKは故障しないことで有名だけど、する時はするってことでね。全員が全員ジャムってるのはおかしいかもしれないけど。




★ ☆ ★



 くっ。


 私はアホだ。


 そうだよ。ハイジャックだなんて、普通に大事件だよ。


 うん。香港じゃなく、直近の空港に緊急着率してハイジャック犯はもとより、私たちも降りることになった。


 修学旅行? もちろん中止だよ。畜生! あぁ、九龍城、見てみたかった。


 まぁ、こんなことを思っているのは私くらいのようだ。


 先生はみんなの精神面のケアに天手古舞だ。いや、先生も大概ショックだろうに。


 なんか宿泊施設が用意されてるみたいだから、そっちいったら私も先生のお手伝いをしよう。そのための昭和の委員長スタイルみたいなもんだし。


 もちろん私も心配されるだろうけど、「いえ、殺されかけるのは、かれこれ3度目なので大丈夫です。慣れました!」とでも云って置けば問題ないだろう。ドン引きされるだけで。


 そもそも先生は私の事情を知っているしね。小学校卒業式のアレと、1年時のストーカー事件のこともね。


 そんなわけで、やっぱりうるさいマスコミの集団とか、ハイジャック犯を護送するための当局の方々とかでごった返す中、乗客であった私たちも送迎用のバスに向かって進む。


 つか、酷いなこの状況。ちゃんと整理する人とかいないのかな。一応、ここも英国領のはずなんだけど、なんだこのカオスっぷりは。


 まるで満員電車みたいな状況の中、私たちはじわりじわりと進む。


 途中、押された拍子によろけて、ほぼ身動きできないというのに後方に倒れるようにして後ろの人にぶつかった。


 ぶつかり、変な衝撃をうけると共に、胸の中に妙な違和感と痛みが生じる。


 ん? あれ?


 カクンと左膝の力が抜ける。


 胸にの違和感は消えない。痛みも消えない。なにかが刺さった!?


 いや、()()()()!?


 ここで私は自覚した。


 くっそ、二段構えかよ。


 そう思ったところで、私の意識は暗転した。周囲の混雑のせいで、倒れることもできずに。



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― 新着の感想 ―
九龍城観光したいって考えるの不自然だと気付けない状態なんだろうなぁ。 生き延びたいのに何故か危険地帯へ頭突っ込みたがるという。 死亡イベントが向かってくるというより、死ねるタイミングへ自分から向かうよ…
 ここまで来ると、地元や土着の神じゃなくて、もっと上のシステムの自動化に成功してコタツに入ってぬくぬくダラダラしてる階級の管理者かその下辺りが関与して、どうしてもめぐるを……なんて妨害している様に見え…
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