表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/31

私、時永めぐる(13)は、8度目の人生を歩んでいる_2


 私、時永めぐる(13)は8度目の人生を歩んでいる。


 えーっと、とりあえず死亡イベントは回避できたよ。


 ……できたんだけど、大変なことになった。


 いや、私の周りはほとんど問題ないんだけどさ。私たちがやらかしたことが発端となって、人身売買組織の摘発というか、芋づる式に国際レベルの大問題となって大変なことに。


 海の向こうの、無駄に土地と人口がやたらと多いお国が世界から非難されまくってるよ。


 なんかあの芸能事務所……というか暴力団は、大陸系のマフィアの末端組織だったらしく、人身売買組織の規模もかなりの大きさだったようだ。


 でもって、その顧客データが流出した結果、世界を揺るがす状況に。


 いやぁ、大国の大物政治家とか、誰もが聞いたことのあるような資産家とか、某宗教の重鎮とか、そしてもちろん映画なんかでおなじみな俳優のあんな人とかこんな人が報道されてしまったよ。


 ちなみに、人身売買の商材としては、そのまま愛玩用(養子?)から性目的(性奴隷、商用)、更には臓器売買にいたるまで多岐に渡っている。ユニークなところでは、呪術の生贄なんてのもあったようだ。


 そんな大騒動になったおかげか、地元警察組織の一大スキャンダルが霞んでいるというね。


 うん。その暴力団とつるんでいた警察のお偉方……といっても、一番上でも署長クラスだけれど、逮捕されるなんてことになったんだよ。ちっとも報道されてないけど。


 いや、まてよ。もしかしたら報道を警察組織が止めたのかな? 多分だけど。事の大きさを考えると、捕まった警察組織側の一番上の役職が所轄の署長って低すぎないかな?


「トカゲの尻尾切りであろうの。権力を持った者の堕落した先など、いつの世も同じぞ。末路に至ってはさまざまであるがの。逃げ切る輩も多かろう。まさに“憎まれっ子世に憚る”ぞ」

「それを考えると、あっちのあの腐れ王様は筋が通っていたのかしらね?」

「あれは単に洗練されておらぬだけのクズぞ」

「いや、確かにそうなんだけどさ。痛ましいほどに身の程知らずの馬鹿だったし。といっても、こんな小賢しい逃げ足と隠蔽だけを洗練させてもねぇ。逃げたお偉方はなんの為に警察組織に入ったんだろうね。初志から犯罪に手を染めるためでないことを祈りたいよ」

「それは無理ではないかのぅ。私腹を肥やすために組織に入ったのであろ? ほれ、一般とえりぃととでは、始めが違うらしいではないか」

「あー。そんなのを刑事ドラマで見たねぇ。学歴だけで偉くなるのって問題な気がするけど」


 モラルがなってないみたいなんだよねぇ。


 まぁ、人間だから仕方ないってことなのかなぁ。


 上に行くことばかり考えてる連中に、正義感なんてありゃしないだろうし。それは向こう(異世界)で散々見たしね。


 さて、それじゃ今回、死を回避するために何をしたのかを話そう。


 今回はちょっとばかり大変だった。これまでみたいに単純な対処、ってわけじゃなくなったからね。


 まぁ、現実改変能力を使って、状況の大規模改変を行えばどうにでも出来ただろうけど、それは避けた。

 いわゆるMPが足りるか不明であったし、なによりそれをした場合、連中を排除するには至らなくなるからだ。


 いや、なかったこと、にする方向ぐらいしか思いつかなくてさ。かといって、他に被害者をだすとなると、なんだか生贄を差し出したみたいで気分が悪いからね。


 では順番に。


 まず、あの事務所のある土地に関して調べた(資料等を漁るのではなく、珠ちゃんとコアによる、いわゆる霊的な調査)。結果、一応、あの場所には面倒な“モノ”が居ることが確認できた。


 とはいえ、悪霊の集合体のようなもの、妖怪で云えば、魑魅とか魍魎の類であるため、珠ちゃんからしたら雑魚もいいところとのこと。ただ、数が多いため面倒臭いらしい。


 あ、珠ちゃんだけれど、2度の異世界転移による影響で、力(霊力とか妖力みたいなもの)は十分に回復したとのこと。尻尾も7本にまで復活していたよ。“力”の総量だけをみれば、そこらの山にいる山神以上の力はあるらしい。とはいえ、神格を得ていないため、存在としてはかなり微妙であるらしい。


 ということで、お札を無効化して封じられていたモノを自由にしようものなら、周囲へと被害が広がるのが目に見えているので、そいつらを珠ちゃんとコアの用意した高位の霊モンスター(ホーントって云ってたかな?)を用いて殲滅することに。


 まず、私が現実改変で貼られている護符の効力を消滅させた。いわゆる経年劣化というかたちをとったから、怪しく思われることはなにもない。


 そしてそれを待っていたかのように溢れだした(あやかし)を片っ端から珠ちゃんが焼き、ホーントが……あれは吸収してたのかな? とにかく、殲滅させた。これであの土地も安心だ。


 これが私が呼び出された前日、金曜深夜にやったこと。


 そして次なる現実改変。


 まず、私の呼び出された日を土曜から日曜に変更。これは向こうのミスとした。そして土曜に私同様に呼び出された事務所所属のアイドル候補生を、現実改変ででっちあげて、それを私の身代わりとした。


 さすがに実在の人を身代わりにするのはアレだからね。架空の人物を作り上げたよ。


 その現実改変自体はさほど問題なかった。


 なにせ作り上げるのはほぼ記録だけ。それも無国籍児童としてつくりあげたから、公的な記録が一切ない人物というわけだ。まさに社会に存在する完全なモブキャラだ。


 実際の所、そういう人は少なからずいるらしい。出生届を出されずにいる子は。一例だと、農業研修だかなんだかで来日した外国人が、その研修先から逃げ出して不法就労者となって子供を作った結果――みたいな、ね。


 記録上は存在していないとはいえ、人との関りがまったくないというのは有り得ない。そのため適当にバイト等を行っていたかのように、地域の人々の記憶に適当に彼女の姿を刷り込んだ。もちろん、実際には就労していないわけだから、そう思い込まれるようにしただけだ。


 どこそこの飲食店の制服っぽいものを着た姿の記憶なんかをね。


 いや、実際に就労していたように改変すると大変なんだよ。お給料が発生するでしょ。そっちの改変もしないといけないからさ。


 だから“見たことはあるけど、どこの誰かは知らない”という存在ということだ。


 そして最後の仕上げとして、珠ちゃんがその人物に化けて、あの芸能事務所へといって、やりたい放題やらかしてきたってわけだ。


 そういえば、私の死因はなんだったんだろう? 薬物中毒だというのはわかるんだけど。前後不覚に陥ったわけだから、睡眠薬でも盛られたのかな? いや、でも、その手の薬は効きにくいはずなんだけどな。


 実父が母の体質を知っていて、大量に薬を盛った? いや、そんなことをしたら普通に致死量を超えるよね。別に時永の家系は、その手の薬が効きにくいだけで、耐性があるってわけじゃないから。


 まぁ、珠ちゃんにはその手のものは一切効かないから、問題ないけど。


 で、こっからは全てが終わった後、珠ちゃんから聞いた話。


 飲まされた薬は睡眠薬系のものだったもよう。ただ、その後に覚醒剤を射たれたようだ。種類は不明だけど。というか、睡眠薬……睡眠導入剤? と併用して大丈夫なものなの? いや、多分ダメなんだろうなぁ。だから私、死んじゃったんだろうし。


 それとも単純に過剰摂取だったのかな?


《珠緒様より提出された薬物の量からして、双方とも致死量を超えていました》


 ……あの男はなにを考えていたのだろう? 借金の方を殺してどうするんだ? 価値がないよ? さすがに死姦動画なんかてニッチだろうし、借金の埋め合わせにもならないと思うんだけど。


 さて、昏倒演技を開始した珠ちゃんは、そのまま車に載せられ運び出されていった。


 私が直接確認できたのは、ビルの駐車場から走り去る白いワンボックスの姿まで。


 ここから先を、珠ちゃんとコアから聞いているところだ。


 車は長々と海まで走り、港湾倉庫へと到着。意外にも珠ちゃんは丁寧に運ばれていたそうだ。もし途中で乱暴なんてされていたら、ワンボックスの中は血臭が立ち込める状況になっていただろうね。


 倉庫には商品であろう子供(未成年者であることから、子供と称しておく)が8人。下は7才くらいから、私と同年代くらいまでの男女だ。


 ……男の子も商品になるのか。いや、まぁ、そうか。そういう趣味の人は多いって聞くし、そもそも顧客が男性とも限らないしね。


 で、人身売買組織の輸送を担当している連中かな? それが到着したところで珠ちゃんが行動を開始。ただ、当初の予定を大幅に変更したそうだ。というのも――


《我々がでっちあげた人物は死亡という形で終わらせます。当初は抵抗した結果死亡とする予定でしたが、他の被害者も多数いましたので、彼女には英雄になってもらいました》


 は?


「うむ。あやつらの所持していた銃を奪って、乱射してきたぞ」


 え? 銃撃戦とかしたの? いや、なにやってんの!? 現代日本でそんなの大事件じゃん。つかなんで報道されてないんだよ!?


《結構な数の銃器を所持していましたね。大半は拳銃でしたが、船の方にはアサルトライフルなども置いてありました》


 お、おぉ? に、日本も物騒になったものだよ。いや、知らないだけでそんなものなのかな? なんか、九州のほうで一般家庭から手榴弾が見つかった、なんてニュースを見たことがあったし。そもそもその家は一般家庭だったのか?


「あやつらなんぞ皆殺しにしてしまってもよかったのであろうが、後の事を考えて命は取らんでおいたぞ」


《捕まってもらわなくてはなりませんからね。珠緒さんには、行動不能になり且つそう簡単に死に至らない部位を破壊して頂きました》


「うむ。膝辺りを撃ちぬいておけば、這いつくばるしかできんからの」


 珠ちゃんは得意満面だった。コアもきっとこんな感じなんだろう。


 要は、出血を押さえつつ行動不能に陥らせたってことだよね。でも珠ちゃん、そんなに射撃精度が凄いんだ。


「む? 銃など適当に撃てば当たるぞ。そのように弾道を決めれば良い」


 腕を組み、やや仰け反るように、むふーっとドヤ顔を浮かべる白髪幼女。


 あぁ、うん。さすが大妖怪。いや、いまは精霊寄りの妖怪と精霊の中間らしいけど、とにかく、人間の常識なんて関係ないね。


《最終的には、ワンボックスと輸送用の船を爆発炎上させて騒ぎを大きくしました。その後、珠緒様には射殺されたように装ってもらいました。尚、死体は予め準備しておいたものを置いて来ました。ボニーのように蜂の巣となった死体を。ご安心ください、遺伝情報から何から、人類となにひとつ変わりない身代わりです》


 あぁ、うん。本当、やりたい放題やってきたんだね。


《楽しかったです》


「うむ。堪能したぞ。そうそう、売られる寸前であった者たちは、儂が助け出した体にしておる。血まみれの姿であったから、印象は抜群であろう」


《それ以上に、女子高生を装った言葉遣いを無理に真似たものですから、イントネーションが微妙にカタコトになっていたため、留学生かなにかと思われていましたよ。却ってそれが良かったと思いますが。なにせ銃器を自在に扱う女子高生など、日本にはまずいませんからね》


 なかば絶句しながらも、ふたりの報告を聞いていたよ。


 派手に爆発炎上なんてことを起こした結果、予想以上に早く警察が到着し、その場は収まった? ようだ。


 そしてそれから3時間ほどしてからTVにニュース速報が流れたようだ。私はもう就寝していたからね。いや、夜更かしとかできないし、自室にTVとかからさ。


 翌日日曜の朝のニュースで、埠頭で爆発炎上とか流れていたよ。空撮なんてのもあったけれど、あれは周辺が封鎖されてたからなんだろうな。


 でもなんらかの事件があった、銃撃音が聞こえた程度だけの報道だった。


 そしてその翌々日あたりから、海外から人身売買組織摘発に関しての報道が一気に流れて――いまに至るって感じかな。


 で、いま思ったんだけどさ。


 ねぇ、コア。人身売買関連の情報を流したのって……。


《足がつくようなことはしていませんよ。折角顧客データも手に入ったわけですからね。有効活用しないと。普通は信用されないでしょうが、日本での報道と、我らが英雄の死体の写真を添付して置けば騒ぎにもなります》


 う~わぁ~……。つか、どっからアクセスしたの?


《衛星からハッキングしました》


 ……。


 こうしてみると、ダンジョンコアって、アナログ仕様だったから安全(?)だったんだな。デジタル仕様の子機ができてからというもの、本当、やりたい放題だよ。


 あ、そうだ。


 私の父親ってどうなったの?


「あー……。あれは無事ぞ。事務所のほうにはおったが、港には同行せなんだからの」


《現在は逃亡中ですね。ですが手配されていますから、いずれ捕まるでしょう。捕まらずとも動向は把握していますので、再度こちらに接触を試みるようでしたら、もういっそのこと“向こう”へ送りつけてしまいましょう》


 ……向こうって、異世界?


《はい。現在のマスターであれば、世界間のゲートを開いてもさほど問題ないのでは?》


 まぁ、思った以上に【魔力増槽】が優秀だから、多分余裕でできるけど、あっちに放り込む……いや、そのほうがいいか。後腐れなくて。言葉も通じないし、治安は南アフリカ並だしね。


 いや、本当、あっちで生活するの大変だったんだよ。珠ちゃんとコアがいなかったら、私なんて3日ともたずに死んでたと思うよ。


 ま、こっちに迷惑が掛からなくなるなら、それでいいか。


 こうして、今回の事件は私を蚊帳の外に置くことで回避することができた。






 尚、実父は2ヵ月後に強面の人たちと共に私を拉致しようとしてきたので、向こうに送りつけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ