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私、時永めぐる(0)は、8度目の人生を歩んでいる


 私、時永めぐる(0)は8度目の人生を歩んでいる。


 さすがにね、私も学んだんだよ。


 だから産婦人科にいる間は大人しくしていましたとも。


 ということで、毎度のあの看護士さんは、この時間軸――世界線? では平穏に業務を行えたということだ。


 さて、異世界での生活だけれど、新記録を打ち立てたよ! 遂に日本での成人である二十歳を突破できたよ!


 ちなみに、死亡した時の年齢は22だ。


 冷静に考えるとダメじゃねぇか、って感じだけれど、ある程度は予定通りでもあったといえる。


 いや、それでもちょっと早かったとは思うけれどね。あと10年くらいは大丈夫と思っていたんだけれどなぁ。






 それじゃ、異世界であれからなにがあったのか……というか、なにをやらかしたのかを話そう。


 うん。予定通り魔王ムーブをしていたよ。といっても、表立ってはしていないけれどね。いわゆる裏ボス? 的な感じかな。


 まぁ、やったことといえば、国家間の情勢を悪化させて戦争を引き起こしたってだけなんだけれど。


 で、私たちはと云うと、指示をダンジョンに出すだけ出して、不穏な情勢になった世界を観光して回り、戦争が起きる直前になる頃には、戦争とはまったく関りの無い国で高みの見物をしていたよ。


 丁度その頃に二十歳になったかな。


 まず、最初の5年間で、この辺りの国々の関係を悪化させたんだよ。で、あれこれバチバチ角を突き合わせてたんだけれど、通商破壊工作が露見して(事実関係は不明)、戦争開始。あれよあれよと戦火は拡大し、周辺6ヶ国の大戦となった。


 その時にはもう、そこから離れた小国に移動して、街はずれの森で畑耕して生活してたんだけど。いや、人里での暮らしが辛くてね。和を貴ぶ国民性の日本人には、徹底した個を重んじる国民性の世界で生きるのは無理ってものよ。


 で、6ヶ国の内2ヶ国が滅亡。あ、私たちを召喚したあの国は存続中。あの国は米国みたいな大国だから、そうそう潰れないよ。


 そしてこの時点で次の状況へと以降。


 実はその国の管理ダンジョンのマスターが謀反を起こして、この状況を作り上げたという情報を流した。そして既に国の中枢、王家はもとより、上位貴族のほとんどが傀儡となっていることも。


 こうして、人類VSダンジョンの構図を作り上げた。


 で、ここで一気に勢力を伸ばしてきたのが宗教。この世界にはかなりの数の宗教があったんだけれど、その内のひとつ、ヘネシス教とやらが、この戦争を利用して他宗教を喰らいまくって一気に一大宗教へとのし上がった。


 地球でもそうだったけれど、勢力を付けたばかりの初期の宗教というのは酷いものだ。


 歴史で織田信長の延暦寺焼き討ちの話を教わったけれど、基本的に悪行に思えるように教わるんだよね。


 でも当時の宗教事情を考えると、あいつら害悪でしかなかったから、かなり苛烈な荒療治であるけれど、社会を正しくするためにはあの焼き討ちはアリだと私は思ったんだよね。


 どういうことかというと、当時の宗教って、神様……この場合は仏様か。それをダシにしたペテン師共の集まりで、得たお布施だので酒池肉林三昧の破戒僧しかいなかったってのが実情だったみたいだよ。


 で、こっちのヘネシス教の似たようなものでね。


 分かりやすい人類の敵なんてものがあるものだから、もうやりたい放題して勢力を伸ばしまくってきたんだよ。


 まぁ、それだけ騙される純朴な人々が多かったともいえるけれど。


 で、個人主義が行き届いた国民性のせいなのかどうかは知らないけど、なんというか、進む方向性が決まると視野狭窄を起こしたように遮二無二突き進むんだよね。


 だからまぁ、各地の管理ダンジョンを破壊しまくるなんて方向に信者共が犠牲を厭わずに無茶をはじめたんだよ。


 当のヘネシス教の総本山では、奪取したダンジョンを利用して贅沢三昧してるっていうのにねぇ。その贅沢をするために、異教徒認定した連中をダンジョンに喰わせて、得た……いわゆるダンジョンポイントで、好き放題しているというね。


 本当、性根の腐った連中はすぐに社会を牛耳ろうとするんだから。






 さて、それじゃ今回、どうして私は死んだのか話そう。


 うん。私を殺したのはヘネシス教の連中。ダンジョンを用いてアカシックレコードにアクセスして、ことの真相を突き止めたらしいんだよ。


 実際の所、それは奇跡に近いものだ。というのも、アカシックレコードのデータって、かなり混沌とした形で収められているらしくて、目的の情報を引き出すのは至難であるんだよ。


 私のところはほら、コアがいろいろやらかして、情報処理関連は凄まじいことになってるから。配下の魔改造コアも複数あるしね。


 しかし、我欲に突っ走っている宗教屋が奇跡的に真相を突き止めるとか、どんな皮肉なんだか。まぁ、情報取得のためにかなりの犠牲がでたらしいけど。犠牲者はダンジョンの餌にされたようだけど。


 で、私の存在を突き止めて、どうしたのかというと、私のいた地域を丸ごと焼滅させた。うん。消滅じゃなくて焼滅。


 いや、事が露見したら暗殺者ぐらいは送り込まれるかなとは思っていたけれど、まさか局地核攻撃っぽいことをやられるとは思いもしなかった。


 大規模儀式魔法を展開して、冗談じゃなしに大陸弾道弾みたいな感じで灼熱の火の玉を撃ち込んできたんだよ。しかもそれをしっかりと隠蔽して。


 だからこっちがそれを察知できたのは、着弾の直前でどうにも対処できない有様でね。


 というかさ、普通、私ひとりを殺すのに街をまるごとひとつ数万人も巻き添えにするとか思わないよ。


 さすがの私も、上空に突如として現われた太陽みたいな火の玉に『うわぁ、ここまでやんのかい』と、呆れ感心したよ。


 こうして私の7度目の人生は終了。


 あの世界線がどうなるのかは分からない。あのまま存続するのか、別の世界線に統合されて、私のやらかした事実が消えるのかは不明。


 とはいえ、存続した場合はさらに酷いことになるわけだけど。私が殺された後のことも、ダンジョンには指示しておいたんだ。


 縛りプレイ終了って。


 一応、私が生きている間は、私が世界の支配者なんてものにならないように、攻略できそうでできないラインでダンジョンには活動を制限させておいたんだ。


 即ち、ダンジョンには侵略行為を一切させずに、防戦のみ、それも手抜きでさせていたんだ。


 その気になれば絶対破壊不能の大型ゴーレムでも作って、ただ歩かせるだけでいいからね。時間は掛かるけれど、それだけで文明社会を破壊することはできる。ただ踏み潰して歩くだけだけれど。


 枷の外されたあのダンジョンが何をやらかすのかなんて、想像もつかないよ。そもそもくっつけてある外付けのアレには、人類社会崩壊をインプットしてあるんだから。



★ ☆ ★



 さて、こうしてはじまった8度目の人生。


 今回の目標は、中学校卒業だ。そして目指す回避は実父による私の殺害。


 これを身の回りの落ち着いた今日からみんなと相談する。


 うん。母上の離婚が決まって、今日、時永の家に越してきたんだよ。


 さて、その相談の前に、現状の私がどうなっているのかを確認しよう。



+--------------------------+


 ■時永めぐる


 年齢:0(90)歳 種族:人間(モンゴロイド[大和民族])


 称号:【理核管理者】【格上殺し】【精霊憑き】


 状態:良好


 技能:

【農耕(中級)】【調理(中級)】【算術(中級)】【語学(初級)】


【射撃(中級)】【隠形(中級)】【徒手格闘術(初級)】【拳法術(初級)】【短剣術(中級)】【護身術(初級)】


【土魔法(中級)】【水魔法(中級)】【火魔法(中級)】【風魔法(初級)】【光魔法(初級)】


 能力:【ふりだしにもどる】【現実改変】【鑑識眼】【異空門】【地図】【生体探知】【魔力増槽】


+--------------------------+



 こんな感じだ


 称号の【(あやかし)憑き】が【精霊憑き】に変わった。これは珠ちゃんの変化によるものだ。怪異ではなくなった、ということのようだ。


「より世界に調和したということだの。とはいえ、あの魔除けを突破できるのか怪しいところではあるが」


 あれ、ダメなの?


 確認したところ、魔除けというのは超常の存在を見境なく弾く代物であるようで、それこそ神様扱いされるようなレベルの存在でもなければ、突破は厳しいのだとか。


 前回の時でも突破をしようと思えばできたらしい。ただ、それをすると力の9割くらいを失うことになりそうだったとか。


 そこまで力を失うと、それこそそこらの木っ端妖怪とさして変わらないため、まともに戦えなくなるそうだ。自身の存在維持で手一杯になるみたいだ。さらに云えば、その場から出ても元に戻らない。即ち力の蓄え直しとなるようだ。


 うん。デメリットが大き過ぎる。


 なら、現状だとどうなるんだろう?


 確認はしてきたんだよね? あのビルはもう建ってたんでしょ?


「うむ。すでに魔除けも施されておったの。

 試しに結界に触れて来たが……そうさの、突破するとなると、6割、ヘタすると7割ほど力を失うやもしれん」


 え、お守りってそんなに強いの?


「いや、主様。あの建物に施されている魔除けの数が異常なのだ。もしかすると、あの土地になにか厄介な物でもあるのか、或いは謂れがあるのやもしれぬの。もっともそれが真実であるのか、捏造であるのかはわからぬが」


 あー……なるほど。曰く付き、或いは事故物件みたいなものなのか。


 さて、技能のほう。これは畑仕事の結果、農耕技能と魔法技能が増えた。


 土系統の魔法で畑を耕して、水やりは水系統の魔法を使ってたからね。なんのかんので、火、土、水は日常で使ってたから、技量が上がったよ。光も日常で使ってはいたけど、灯りのために漫然と使ってただけだから、技量は伸びなかったね。


 あと戦闘技能が増えているけれど、いろいろと物騒だからね、あの世界。だからコアに戦闘訓練相手にオートマタを出してもらって、それを相手に最低限身につけたよ。


 まぁ、近接戦闘での実戦は経験していないけどね。だいたいは珠ちゃんが遠距離で仕留めちゃうから。


 で、最後に私の能力。今回は【魔力増槽(タンク)】。魔力、なんてついているけれど、実際の所は……なんだろう? とにかく、エネルギー的なものだ。要は【現実改変】をきちんと扱えるようにするために、それで消費されるエネルギーを溜めこんでおけるようにしたんだよ。


 どの程度溜めておけるのかは不明だけれど、上手くいけば、ある程度の歴史改変なんかも出来るかもしれない。……歴史なんて云ってるけど、せいぜい数年程度の改変ができれば御の字だと私は思っている。というより、普段使う際に疲れ果てなくなればいいのだ。


 それじゃ、一番肝心なことを始めようか。


「いかにしてあのクソ親父をとっちめるか、話し合うよー」


 かくして私の8度目の人生がはじまる。今度こそは中学を卒業するのだ!



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