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私、川守めぐる(10)は、7度目の人生を歩んでいる_2

※異世界編の残りが書き上がりましたので投稿します。

 全2話。次話は明日0時に投稿します。


 私、川守めぐる(10)は、7度目の人生を歩んでいる。


 短く終わりまくっているとはいえ、人生7度目。約80年を生きてきたわけだ。だいたい普通の人の一生分というところだろう。


 同じような人生を繰り返し歩んでいるとはいえ、毎度同じ人物としか関りがないなんてこともない。


 だからそれなりに私も多くの人と関わっているし、見て来てもいるわけだ。


 見てきているわけなんだけれども、その中に当てはめても、こいつらはどうにも相容れない。つか、冗談じゃなしに会話が通じないよ。






 ダンジョンを制圧後、支配下に置いたダンジョン・コアに外付けCPUというか、私のダンジョン・コア謹製の制御ユニットをくっつけて、私たち以外の支配下に絶対に落ちないようにしたよ。


 コア曰く、ダンジョン・コアをデジタル化する優れモノの洗脳ユニットとか。


 ……いや、コア、いったい何を作ったのさ


《各機能の処理能力UPを目指した結果です。直結した場合、少々問題が発生するため、私は直結しておりませんが》


 いや、だから一体何を……って、洗脳装置とか物騒なことを云ってたね。まぁ、敵対してたんだからどうでもいいや。


 丁度、ダンジョン上の建物もダンジョン化が完全に終了し、王様だの王子さまだの諸外国の外交貴族だのを片っ端から捕縛した。


 ただ、唯一しくじったのは――


《マスター、申し訳ありません。担任を含めた5名を取り逃がしました。私たちが最奥に送られた直後、即座に移送されたようです》


 うん。担任たちを逃しちゃったんだよね。まぁ、連中の未来は暗いだろうからどうでもいいか。つか、暗くするし。多分、ここで食い殺されていたほうが幸せだったと思うくらいに。


 ま、それはひとまず置くとしてだ。


 ダンジョン全体を見直して整備し直し。上の建物の管理もダンジョンのほうのダンジョン・コアに移譲。私が設置したコアは回収。


 尚、ダンジョンの構造自体はそのまま。造り変える……改築するとなると大変な労力となるため、トラップの設置と配置モンスターを変更するのみとした。


 はっきり云おう。攻略不能である。それも攻略できそうで、絶対無理という仕様だ。


 改築前に全般を見直した結果、最下層のドラゴンのコストが高すぎて酷いことになってたよ。つか、最下層以外モンス無しとか、すごい歪なダンジョンだったよ。


 なるほど、だから最下層へ一気に放り込んだのか。


 まぁ、殺戮エンタメとしてみるなら、それが一番正しいのか。いわゆるコロッセオみたいな戦闘を観るのではなく、人が泣き叫び逃げ惑った末に喰われるところを観るのが目的の場所だからね、ココ。


 うん。本当に悪趣味だね。そんな悪趣味がお好みの彼らに、無駄に多様なサブカルで鍛え上げられた日本人が難攻不落攻略不能(一見すると簡単に攻略できそう)なダンジョンをプロデュースしてあげよう。


 その為にも、クズな連中にはここにこれまで通り来てもらって、なおかつ異常が知れたら攻略者を送り込んでもらわなくてはならない。


 それをするためには、捕まえた王様とかを帰さなくちゃならないんだけど、それは有り得ない。


 さて、だいたいの変更は終了したし、捕まえた王様たちに会いにいこうか。






 王様たちだけれど、あらたに造った部屋。ボスエリアに隣接する形で造ったよ。丁度、ダンジョン・コアの安置部屋の対角となる場所だ。


 そこに彼らは壁に埋め込まれるように拘束されている。そうだな、宇宙生物との戦いを描いたSFホラーな洋画を知らないかな? あれで攫われたコロニーの住人が壁に埋め込まれるような形で拘束されている。生物の幼生体の餌として。蜂が獲物を麻痺させて、そこに卵を植え付けるのと一緒と思ってもらえればいいかな。


 丁度そんな感じに連中を捕らえてある。


 あ、もちろん卵なんて植え付けないよ。埋め込まれた手足は壁と一体となって、そこから衰弱しないように栄養分を供給している。ついでに、その壁に埋め込まれている間は不老不死にしておいたよ。


 死にたくない―! とかって騒いでいたらしいから、願ったり叶ったりだね。感謝して欲しいものなのだけれど……。


『えぇい、ここから出さぬか、この野蛮人めらが!』


 この有様である。


『ねぇ、珠ちゃん。自分の立場を分かって云ってるのかな?』

『それすらも理解できぬ愚か者なのであろ。常識というものがないのだ。まぁ、常識的な者であるならば、わざわざあんな大掛かりな誘拐などせぬというものぞ。その上で攫った者を無駄に消費しておるのだ、頭の造りなどたかが知れておる』


 王様にもわかるように、わざわざこっちの言葉で話す。


 そしたら、王様をはじめ、捕まえてるみんなが驚いた顔をしているよ。


『言葉を……話せるだと』


 嘘だろ、ガチで驚いてる。


『覚えたくもないあんたらの言葉を覚えてやったよ。そもそも言語が違うのが当然だってのに、私らがお前らの言葉を話せないから野蛮人とか、脳みそに蛆でも湧いてんの?

 だいたい、あんたらの着ているものよりも遥かに質も縫製も良いものを身に着けているんだ。私たちの文明レベルくらい推し量れるでしょ? ただの非武装の民間人、それを武装集団で押さえつけて奴隷にしているだけのお前らには、その程度の事すらも考えが及ばないの? 野蛮人はどっちよ?』

『黙れ黙れ黙れ! 予が王城に戻った暁には、貴様らを全兵力を以て討伐してくれる!』


 私は顔を顰めた。げんなりする、なんて表現はこのような状況に使うに違いない。


『ねぇ、珠ちゃん。こいつの思考回路はどうなってんだろ? そもそもこの状況でどうやって私に報復するの? 軍を上げるとか云ってるけど、ここからどうやって帰るつもりなんだろうね? 手も足ももうないんだよ』

『儂らの常識では及びもつかない事象が起こるとでも思っておるのではないかの。例えば、主様が突然こやつを解放するとか、突如「私は神だ!」などと宣う輩が現われて、助け出されるとか』

『あぁ……夢見がちなんだね。もういい歳だろうに、哀れな』


 なんかギャアギャア騒ぎ出した。うるさいから音だけ遮断しよう。コア、よろしく。

 うん。静かになった。


『こっちの声は届くかな?』


《抜かりはありません、マスター》


『ありがとう。それじゃ、予定通りにいこうか。スナッチ・イミテーターは準備できた?』


《生成完了しました》


 コアが答えると同時に、天井から繭というか、豆の鞘というか、2メートル程の代物が降りてきた。捕らえている人数分であるから、結構な数だ。

 この円形の大きな部屋の壁に埋め込んで並べてあるんだけれど、2百人くらいいるからね。


 それぞれの虜囚の前に降りてきた繭がパカリと割れる。……やっぱり繭というよりは、そら豆の鞘のほうがピッタリの表現だな。


 中から現われたのは、虜囚たちと瓜二つの人物。もちろん全裸だ。


 まさしく生まれたてではあるが、きちんと本人とまったく同じく古傷なんかもあるため、偽物と見抜くのは困難だろう。もちろん、記憶だって完全にコピーしてある。


 唯一の違いは、ダンジョンのモンスターであるため、完全にダンジョンの操り人形であるということだ。


 誘拐する(Snatch)模倣者(Imitater)


 人を攫って入れ替わる。入れ替わった後はどうするか? ここに国家の最高権力者がいるんだ。それを入れ替える。記憶からなにからまったく同じ別の化け物と。


 どうするかなんて、決まってるよね。


『あんただったら、この化け物をどう使うかな? 敵国の要人と入れ替えてのスパイ行為? 破壊工作? それともハニトラ? まさかと思うけど、お気に入りだけれど手を出すことのできない女に模倣させて、獣欲を満たすとかないよね?』

『主様、これは“王”などという肩書をもっているだけの即物的な俗物ぞ』

『下半身が本体かー。動物以下ね。動物は発情期でもなければそうはならないもの。

 それじゃあ、あんたたち。やることは分かっているわね。行動開始よ』


 私が命の従い、化け物共が準備された衣服を身に着け、部屋から出ていく。


 もちろん、彼、彼女らは、すでに配置されているモンスターに襲われることもなくダンジョン内を進める。


 そして本来、本人たちがいるべき場所へと行き、国家を牛耳るのだ。それも悪い方向に向けて混乱をもたらすために。


 まぁ、それをどうやって成すのかは、コアに丸投げだけど。生憎、そういった知識はまるっきりないし。

 いや、私が好き勝手にテキトーに政治を行えば、あっというまに国なんて衰退するだろうけど、それじゃ面白くないしね。


『さて、あんたたちに朗報だ。あんたたちは死なないよ。このダンジョンに囚われている限り。あんたたちが切望した不老不死だ。よかったね。願いが叶ったよ。まぁ、その代償として、そこから出ることは出来ないけれどね。

 あぁ、安心すると良いよ。暇つぶしはできるから』


 これみよがしにパチンと指を鳴らす。


 えぇ、このためだけに、今回の人生の数年は練習に費やしたくらいだ。


 いや、指をパチンと鳴らすのができなくてね。出来てもこう……なんていうの、はっきりとした音が出なくてさ。


 自分のぶきっちょさに絶望したよ。


 それはさておいて。


 指を鳴らすと彼らの前にモニターが降りて来る。当然そこには映像が流れているわけだ。恐らくは、彼らにとって最もこれから気になるであろう場所が。


 ん? なんでそんな映像が流れるのかって? そんなもん、もうこの世界のあらゆるところに情報収集用のドローン(科学仕様ではなく、オカルト仕様)をばら撒いたからだよ。ついでに衛星も打ち上げたから、もう私たちはやりたい放題できるってものよ。


 ダンジョンの生産能力はチートだね。衛星打ち上げだって、科学ではなくオカルトでやったもんだから楽だったし。オカルトの力ってスゲー。まぁ、科学での情報があったればこそだけれど。


 アカシックレコードからこの惑星の基礎情報は得られるから、あとは目的の場所へとドローンを転送させればいいだけというね。欠点は、送ることはできるけれど、回収するには遠距離を延々と飛んできてもらわなくてはならないわけだけど。


 あ、ドローンのサイズはテントウ虫サイズだよ。このあたりは正にオカルト万歳だね。地球の科学だと……最先端だとハエサイズのドローンが開発されてるんだっけ? でもいま私たちが使っているのと比べると、性能面で劣っていると思う。主に行動範囲とか稼働可能時間とかで。


 さて、それによってもたらされた映像を見せつけられた連中はと云うと、ただただ驚愕しているようだ。


 そこから、自分たちの世界が壊れていく様を観ているといいさ。


 ……うん。こんなことをやらかすとなると、さしずめ私は魔王ってところになるのかな?


 ま、いっか。


 世界が戦乱に包まれるまでしばらく時間はあるし、それまで観光するとしよう。


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