6 とりあえずあの時のお礼を
そう呟いて自分の頭をかく伴兆太郎。
それはまさにこの図書館で、この静香から聞いたのだが、
それはさて置き、ここでようやく気を持ち直した紳士クンも間に割って入り、
令太と伴兆太郎に訴える。
「静香さんの言う通りだよ、図書館では静かにしなきゃ。あと、喧嘩もダメだよ。
二人は初対面なはずなのに、何でこんな険悪なムードになってるの?」
それに対して伴兆太郎。
「それはもちろん、この女がお前に不埒な真似をしようとしたからだ」
それを聞いた令太は伴兆太郎を指差して声を荒げる。
「蓋垣に不埒な真似をしようとしてるのはテメェの方だろうが!」
そして再び睨みあう伴兆太郎と令太。
「だから喧嘩はダメだって!
令奈さんも伴君も、僕に不埒な真似なんかしないって分かってるから、
とにかく落ち着いて!」
再び紳士クンが間に割って入ってそう言うと、
ようやく令太と伴兆太郎は引き下がり、お互いにソッポを向いた。
それを見た紳士クンはホッと息をつき、
ある事を思い出して伴兆太郎の背中に声をかけた。
「そういえば伴君、この前は危ない所を助けてくれてありがとう。
あの時一緒に居た友達も、凄く伴君に感謝してたよ」
紳士クンは第二巻の第三話でクラスメイトの笑美と一緒にお出かけをした際、
チャラチャラしたナンパ男に絡まれたのだが、
その時偶然通りかかった伴兆太郎に助けられ、
難を逃れた事があった。
それに対して伴兆太郎は素っ気なく
「別に、礼を言われる程の事じゃねぇよ」
と返したが、内心は物凄く嬉しく、
かつ、令太に対してこれ以上ない程の優越感を感じていた。
そしてそれを敏感に感じ取った令太は、
悔しさのあまり歯ぐきから血が出そうな程に歯を食いしばったが、
ここでは何も口を挟む事ができなかった。




