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4 図書委員流の、喧嘩の仲裁のやり方
・・・・・・やや間を置いて、紳士クンがゆっくりと目を開ける。
するとそこに、信じられない光景があった。
何と令太と伴兆太郎の間に、いつの間にか現れた静香が割って入り、
令太の拳と伴兆太郎の手刀を、両腕を交差させ、
その両手に一冊ずつ持った分厚い本で受け止めていたのだ。
「なっ⁉」
「なにぃっ⁉」
令太と伴兆太郎が交互に驚きの声を上げる。
ちなみに、令太の拳を受け止めた本は
『ホフマン博士の地獄の欲望装置』で、
伴兆太郎の手刀を受けたのは
『ドグラマグラ・上』
いずれもそこそこに分厚い本であった。
それがどんな内容で、それを静香も読了しているのかどうかはともかく、
彼女はその二冊の本で、見事に二人の攻撃を防ぎきっており、
それを目の当たりにした紳士クンは、思わず声を上げた。
「し、静香さん⁉いつの間にここに⁉というか、凄いですね!」
それに対して静香は、令太の拳と伴兆太郎の手刀を受け止めたままこう返す。
「こちらで何やら騒がしい声が聞こえたので様子を見に来たのです。
そしたらこちらのお二人が喧嘩を始めようとしていたので、
とにもかくにも、仲裁に入った次第です」




