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2 たっはーっ!
それは互いに相手が、恋愛的な意味で、
紳士クンに想いを寄せているという事を本能的に感じ取ったからであり、
目の前に立ちはだかるこの人物が、
紳士クンとの恋路の最大の障害になるであろうと直感で悟ったが故の反応だった。
が、伴兆太郎はともかく、
令太のそんな気持ち等知る由もない紳士クンはただただ取り乱し、
とりあえず、この状況で最も知っておきたい事を、再び伴兆太郎に問うた。
「伴君、いつからそこに、居たの?」
それに対して伴兆太郎は、そのイカツイ眼差しで令太の事を睨んだままこう返す。
「この女が、蓋垣を押し倒して襲おうとしていた時からだ」
「たっはーっ!」
これは紳士クンが絶望のあまり、両手で頭を抱えて思わず漏らしてしまった声である。
(よりによってこの状況を、伴君に見られるなんて!)
紳士クンはこの運命のイタズラとも、
著者の嫌がらせとも取れるような状況を心底恨んだが、
とにかく色々誤解されているようなので、それを解くべく口を開こうとした。




