23 ちょっと恥ずかしい体勢
「どっ、どうしたの令太君⁉あ、いや、令奈さん!そんな事したら怪我するよ⁉」
「止めないでくれ!こうでもしなきゃ、俺の心の中はどうにかなっちまいそうなんだ!」
「どうしてだよ⁉もしかして、僕が何か気に障るような事を言ったの⁉」
「ちげぇよ!だけど今はこうするしかねぇんだ!」
「ダメだよ!ホントに怪我しちゃうから!」
そう言って紳士クンは令太の両腕を掴み、何とかその本を取り上げようとする。
しかし令太はそれに抗い、尚もその本で自分の額を叩く事をやめようとしない。
するとそうこうしているうちに二人は互いに足をもつれさせ、
「うわぁっ⁉」
「おわっ⁉」
という声を上げ、床にド派手にすっ転んだ。
ドサッという音とともに紳士クンが背中から床に転び、
その上に令太が覆いかぶさって紳士クンを下敷きにしそうになったが、
咄嗟に両手を床につき、すんでの所でそれを回避した。
「イテテ・・・・・・あはは、転んじゃったね。令奈さん、大丈夫?」
打ち付けた背中の痛みをごまかすように、
紳士クンは引きつった笑みを浮かべて問いかける。
それに対して令太は、バツが悪そうに視線を逸らしながら声を絞り出した。
「俺は、大丈夫。それより、悪い、俺のせいでこんな事になって。
どこか、怪我してないか?」
「僕は大丈夫だよ。それより・・・・・・」
「ん?」
令太が紳士クンの方に視線を戻すと、
紳士クンは自分の頬を人差指でかきながらこう言った。
「この体勢って、ちょっと、恥ずかしいね・・・・・・」
「え・・・・・・」
紳士クンの言葉に、令太は改めて今の自分達の体勢を確認してみる。
すると令太は床にあおむけに寝転んだ紳士クンの上にガッツリ覆いかぶさっており、
ここに誰かが通りかかってこの光景を目撃すれば、
あらぬ誤解を招く事は避けられなであろう。
そしてそれに気付いた令太は、
「わ、悪い!」
と声を上げ、咄嗟に紳士クンの上から飛び退いた。




