9 やっぱり夢でした
そう、さっきまでのアレは、紳士クンの、夢、だったのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁぁあああああっ。ゆ、夢、かぁ~・・・・・・」
紳士クンは魂ごと漏れ出そうな程に声を漏らし、ガックリとうなだれた。
全身からはおびただしいまでの寝汗が噴き出し、
それが紳士クンのTシャツとトランクスをビッショリと濡らしている。
そんな中紳士クンは反射的に右手を自分の股間に伸ばし、
己のバナナの有無を確かめた。
すると・・・・・。
バナナはちゃんと、紳士クンの股間に、ついていた。
(よ、よかった。アレは、ゆ、夢、だったんだ。
ホントに、よかったぁああああああっ・・・・・・)
そう思いながら、天井を仰ぐ紳士クン。
今までにも様々な夢オチで驚きの目覚めを体験してきた紳士クンだったが、
純粋な恐怖という点では、今回の夢オチがこれまでの人生で最も恐ろしいモノだった。
否、現実での出来事も含めて、紳士クンは生まれてこの方、
これほどまでの恐怖を味わった事はなかった。
しかもさっきの夢での令の振舞いは、現実でもやりそうなだけに、
その恐怖はひとしおであった。
(と、とりあえずこの夢が、正夢になりませんように・・・・・・)
紳士クンは両手を顔の前で組み合わせ、聖母様にそうお祈りせずにはいられなかった。
そんな紳士クンを、部屋の空中でプカプカ浮いている、
エシオニア学園の制服姿の布由愁衣が目を丸くしながら眺めていたが、
それに気づく余裕は今の紳士クンにはなかった。