7 バナナをチョン切るのは紳士クンの為
「紳士ちゃん、これはね、紳士ちゃんの為を思ってする事なのよ?
私だって、紳士ちゃんには『女装の似合う可愛い男の子』のままで居て欲しい。
だけど、人は誰しも、今の殻を脱いで新しい自分に生まれ変わらなければならない。
だから紳士ちゃんも、自分の殻であるコレをチョン切って、
新しい自分に生まれ変わるの。
それが紳士ちゃんが本当の意味で、成長するという事だから」
「そんな事ないでしょう⁉そっちの方面に成長するのは絶対間違ってますよ!
いや、確かにそういう人生の選択をする人も居ますし、
それはそれでアリだと思いますけど、僕はそうじゃありませんから!」
「怖いのね。でも、大丈夫。
今の自分から生まれ変わるというのは、
遅かれ早かれ、誰もが通らなければならない道なの」
「この道を通る人は極々少数ですから!」
「ワガママ言わないの!私だって辛いのよ!」
「だったらやめましょうよ!
これは辛くてもやらなきゃいけない事じゃあ絶対ないですよ!」
「そんな事ないわ!
私は覚悟を決めたんだから、紳士ちゃんも覚悟を決めなさい!」
令はそう声を荒げると、裁縫で使う裁ち鋏を取り出し、
左手で紳士クンのバナナの先をつまみ、開いた裁ち鋏を、その根元に当てた。
それを見た紳士クンは、気が狂ったように叫び声を上げる。