23 ぅあしたの
その後ろ姿を見送った令太はぼそりと呟いた。
「あれは、本当に相当のひねくれ者だな」
「あはは、悪い人では、ないんだよ?」
紳士クンは右手の人差指で頬をかきながらそう言ったが、
令太はそれに対しては何も答えず、
手早く必要な参考書三冊とタペストリー一本を探し出し、
そのうちの参考書一冊を紳士クンに持たせ、
「行こうぜ」
と言って資料室を出た。
「あ、うん」
と言って、紳士クンも後に続く。
「あの、そのタペストリーも僕が持つよ?」
自分は参考書一冊しか両手に抱えていない事を気にした紳士クンは、
遠慮がちに令太にそう言ったが、令太は素っ気なく
「いいよ」
と答え、紳士クンの前をスタスタと歩いて行く。
(令太君って、物言いはぶっきらぼうだけど、行動は親切で優しいんだよね。
こういうのが本当の男らしさで、女の子もキュンとくるんだろうなぁ)
と、令太の後姿を眺めながら、紳士クンはシミジミそう思った。
一方令太の方は、ようやく邪魔者が居なくなった所で、いよいよ本題に入る事にした。
(よし、言うぞ。至ってさり気なく、自然な調子で)
「ところで、ぅあしたの事なんだけど・・・・・・」
『ぅあしたの』という部分が、
緊張の為に少し上ずった感じになってしまった、その時だった。
「お~と~こ~ちゃんっ♡」
という、令太のよく知った声が背後から聞こえたと思った瞬間、
「わぁああああっ!」
と、紳士クンの驚きの声が、廊下一帯に響き渡った。




