19 今日もにぎやかエミハナコンビ
そんな中、笑美と紳士クンの間に割って入ったのは、オカルト好きの華子だった。
今日も長い前髪のせいで目の表情はよく分からないが、
笑美にトゲを向けるような調子で華子は紳士クンに声をかける。
「そんな事より乙子さん、
今夜は隣町のイワクつきのアパート探検に行ってみませんか?
その二階の部屋で数年前の土曜日に住人が自殺したらしく、
それ以来その部屋では、土曜日の夜になるたびに、
自殺した住人の苦しみに満ちたうめき声が聞こえてくるそうなんです。
これはエシオニア学園オカルト研究会として、
その真偽を確かめに行かなければなりません!」
するとそれに対して紳士クンではなく、笑美が体を割り込ませて華子に言葉を返す。
「何で楽しい週末に、そんな物騒な所に探検に行かなあかんねん?
それはあんた一人で行ったらええやろ。
乙子ちゃんはウチでお泊まり会をするんやから。なー乙子ちゃん?」
笑美は紳士クンにニパッと笑いかけながらそう言ったが、
そこにまた華子が割り込んでこう返す。
「何を言っているんです!
乙子さんは正式なオカルト研究会の会員で、この前も私と夜の教会・・・・・」
ここで華子はハッとなって言葉を切り、
辺りに先生が居ない事を確認した後、少し声を潜めて続けた。
「夜の教会に忍び込んで、見事に幽霊と遭遇したんです!
それも乙子さんのサポートがあったからこそ!
今夜も幽霊との遭遇を成功させる為、
乙子さんには是非とも一緒に来ていただきたいんです!」
そう言って、前髪に隠れた真剣な眼差しを紳士クンに向ける華子。
その華子の頭を両手で掴んで自分の方に向かせ、笑美が食ってかかった。
「乙子ちゃんはウチと一緒にお泊まり会をするんや!
あんたは幽霊と一緒にお泊まり会でもやっとき!」
それに対して華子は、笑美の左右に分けた赤茶色の髪を両手で掴んで言い返す。
「あなたはそれでもオカルト研究会の会員ですか!
オカルトに興味がないならオカルト研究会を退会すればいいでしょう!」
「最初からオカルトなんかに興味はないし会員になった覚えもないわい!
ウチは純粋に乙子ちゃんと仲良うしたいだけや!
あんたこそ乙子ちゃんを変なオカルト趣味に付き合わせるのはやめぇや!」
「変なオカルト趣味とは何ですか!
科学では解明できない不思議な存在や出来事を発見し研究する事は、
とても崇高で意義深い事なんですよ!」
「何言うてんねん!とにかく乙子ちゃんは今日はウチでお泊まりするんや!」
「いーえ!私と一緒に隣町のアパートに行くんです!」
「ま、まぁまぁ、二人とも落ち着いて・・・・・・」
お互いの髪の毛を引っつかみ、虎とライオンのように睨みあう笑美と華子を、
いつもの調子で紳士クンが苦笑いを浮かべながら止めに入る。




