2 令にとっての令太
彼は、姉の令と幼いころから瓜二つであった。
しかし性格は、自己愛が強く、能動的で積極的で支配的な姉とは対照的に、
自己愛に乏しく、受動的で消極的で従順な、至って大人しい男の子であった。
なので歳は近いものの、二人の間で姉弟喧嘩はほとんど起きず、
それが前世からのしきたりであったかのように、
令は令太の支配者であり、令太は令の家来であった。
令は美しい物が好きである。
そして自分自身がその美しい存在に属するという事に、
かなり早い段階から気付いていた。
そんな令と瓜二つの容姿を備えた令太も、令はこよなく可愛がった。
自分を可愛い洋服や豪華なドレスで着飾る事と同じように、
令太にも様々な女の子の服をバンバン着させ、
屋敷に居る時も、外に遊びに行く時も、
令と一緒に居る時、令太は女の子の格好をし、
その内面も、女の子で居る事を求められた。
令太は令の弟である以前に、令の着せ替え人形であり、
美しい自分の姿を立体的に映し出す鏡のような存在であり、
従順なる分身であった。
なので令には人形やぬいぐるみといった類の玩具は必要なく、
令太さえいれば、自らの楽しみは充分に満たされた。
令太を女の子として美しく着飾る事が、
それと同じ容姿を持つ自分をより美しく際立たせ、
自分の求める美しい世界を創り出す事ができた。




