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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅴ  作者: 椎家 友妻
第一話 紳士クンと、人のよい委員長
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19 好子の空間省略能力

 紳士クン達の前方二十メートル程の道端で、

ランドセルを背負った二人組の女の子の姿が目に入った。

二人とも小学一年生か二年生くらいの小柄な女の子で、

一人は地面に尻モチをついた状態で泣きじゃくり、

もう一人の子は、どうしていいのか分からず、ただただオロオロしている様子だった。

どうやら尻モチをついている女の子は、転んで膝をすりむきでもしたのだろう。

 (うぅ、かわいそうだけど、今は助けてあげている時間がないよ・・・・・・)

 紳士クンは眉をしかめ、そのまま女の子達の前を走り過ぎる事を決めた。

が、好子がそれを受け入れるだろうか?

自分が遅刻しそうな状況でも、

それを差し置いて困っている人に手を差し伸べるんじゃないだろうか?

と、紳士クンが思った、次の瞬間だった。

 「大丈夫?転んじゃったのかな?」

紳士クンの後ろを走っていたはずの好子は、

二十メートル先に尻モチをついていた女の子の元にすでに到達し、

しゃがみこんで声をかけていた。

 「あっれぇええっ⁉」

 思わず声を上げる紳士クン。

二十メートルも先の場所に、一体どうやって一瞬でたどり着く事ができたのか、

紳士クンには全く理解できなかった。

まあそれは著者にも理解できない現象なので、仕方のない事であろう。

これは占い姉妹の(あな)田野(たの)香子(かこ)(あな)田野(たの)水落(みら)()が、

人知を超えた力でその人の過去や未来を視る事ができるように、

好子も誰か困っている人を見かけた時、人知を超えた力を発揮するという事なのだろう。

紳士クンはとりあえず、そうやって納得する事にした。

そんな中、紳士クンが女の子達の元にたどり着くと、

好子は自分のカバンからポーチを取り出し、

そこに入っていたウエットティッシュで、

まず膝をすりむいた女の子の傷を綺麗に拭いてあげ、

その次にガーゼをあてて消毒をし、最後にバンソウコウを貼ってあげた。

 「ほら、これで大丈夫」

 と言い、ニッコリほほ笑んでその女の子の頭を撫でてあげる好子。

すると女の子は間もなく泣きやみ、

 「ありがとう、おねえちゃん」

 と言って、一緒に居た女の子とトテトテした足取りで走り去って行った。

その後ろ姿は何とも微笑ましいものだったが、

今の紳士クンにはそれを優しい笑顔で見送る余裕はなく、

一層差し迫った口調で好子に訴えた。

 「急ごう委員長さん!もう時間がない!」



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