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17 余裕のヨンキチと、ギリのギンパチ
それはそうと、駅前のビルにある電光掲示板の時計に紳士クンが目をやると、
学園の始業時刻まで、あと十分という所まで差し迫っていた。
ここからお嬢様然とした優雅な足取りで学園へ向かえば、
余裕のヨンキチで遅刻になってしまうが、
食パンをくわえて学校へ猛ダッシュする、
ちょっとおっちょこちょいな少女漫画の主人公の心意気でダッシュすれば、
ギリのギンパチで間に合う時間である。
なので紳士クンは、切羽詰まった口調で好子に訴えた。
「大変だ!このままだと遅刻だよ!走ろう委員長さん!」
エシオニア学園の校門では、学園の中で最も怖くて厳しいとされる、
『エシオニアのロッテンマイヤー』こと木比篠先生と、
生徒会副会長で剣術の達人でもある鎌井太刀が、
毎朝生徒の服装検査と遅刻者の取り締まりの為、
怖い顔をして待ち構えているのだ。
万が一遅刻でもしようものなら、学園の中で最も恐れられているこの二人に、
どんな大目玉を食らうか分かった物ではない。
その事は好子も重々承知しているので、二人は食パンこそくわえなかったが、
遅刻しそうな少女漫画の主人公の如く、学園へ向かって走り出した。




