16 紳士クンの『素敵な女性らしさ』にあこがれる好子
その後ろ姿を眺めながら、好子はしょんぼりした様子で声を漏らす。
「また、乙子さんに助けられてしまいました。
私から首を突っ込んだのに、何だか不甲斐ないです・・・・・」
「そ、そんな事ないよ!
結果的に僕が見つけたけど、
そもそも委員長さんが行動を起こさなきゃ僕もお手伝いをしなかった訳だから、
さっきのおばあさんも、今の女の人も、
やっぱり委員長さんの親切な気持ちがあったからこそ、助けられたんだよ!」
紳士クンが両手をワタワタ動かしながらそう言うと、
好子はプッと吹き出し、お腹を抱えながら笑いだした。
それが何故なのか分からない紳士クンは、目を丸くしながら好子に尋ねる。
「ど、どうしたの?」
すると好子は笑い過ぎてにじみ出した涙をぬぐいながら言った。
「ごめんなさい。乙子さんって、本当にいい人なんだなぁと思って」
「えぇ?そんな事ないよ」
「いいえ、そんな事ありますよ。
やっぱり乙子さんは私よりも優しくて、包容力があって、
それでいて芯が強くて、頼りになる。
私も、乙子さんみたいな素敵な女性になりたいです」
「はは、は・・・・・・買いかぶり、過ぎだよ・・・・・」
『芯が強くて頼りになる』
と言われたのは大層嬉しかったが、その後の
『素敵な女性』という誉め言葉がどうしても素直に喜べず、
嬉しさと不本意な気持ちが、
絶妙な割合でブレンドされたぎこちない笑顔を浮かべるのが、
今の紳士クンには精一杯だった。




