11 紳士クンは安産型
「あの、大丈夫、ですか?」
心配そうに声をかける好子に、紳士クンはニコッとほほ笑んでうなずく。
そして地面に置かれたもうひとつのカバンに手を伸ばそうとすると、
「これは私がお持ちします!」
と好子が声をあげ、これは絶対に譲れないという心意気で、両手でその鞄を持ち上げた。
その鞄も見た目通りにかなり重そうで、好子は両手がプルプル震えてはいるものの、
それを持ったまま階段を下りる事はできそうだった。
かくして紳士クンと好子は階段を無事に下り、
改札口まで何とかバリてぇ重いリュックと鞄を運ぶ事ができた。
改札の外にはおばあさんが言っていた三十代半ば程の息子夫婦が迎えに来ており、
紳士クンと好子は大層感謝されたのだった。
特におばあさんは紳士クンの足腰の強さに感心したようで、
紳士クンの腰元をさすりながらこう言った。
「あたごさぁ丈夫な腰つきしてんべなぁ。そげなめんこい顔して大したモンだべ。
これなら丈夫で立派な赤子さぁ、たんと産めんべな」
「あ、あは、は・・・・・・ありがとう、ございます・・・・・・」
紳士クンは産むよりも産ませる立場の人間なのだが、
今それを言うと大層ややこしい話になってしまうので、
ただただ引きつった笑みを浮かべるのが精一杯だった。




