7 少し仲良くなった
最後の部分はひと際大声となり、車両の中が一瞬静まり、
周囲の乗客の視線が紳士クンに集中する。
やや間を置いてハッと我に返った紳士クンは、
「す、すみません・・・・・・」
と声を漏らし、その場で縮こまった。
それを見た好子は周囲の乗客に申し訳ないと思う一方、
恥ずかしさに身を縮こませる紳士クンの姿に思わず噴き出してしまった。
それに対して紳士クンは顔を真っ赤にしながらもコホンと咳払いをして気を取り直し、
今度は声の大きさに気を使いながらこう続けた。
「と、とにかく、委員長さんはちゃんと委員長としてやれているし、
僕よりずっと委員長に相応しいから、もっと自信をもって、ね?」
「はい、ありがとうございます」
何とか笑い声を押し殺しながら好子はそう言い、
紳士クンが周りの目も忘れて自分が委員長に相応しいと力を込めて言ってくれた事を、
この上もなく嬉しく思った。
それと同時に、自分が紳士クンのお悩み相談に乗るつもりが、
逆に自分の悩みを聞いてもらい、更には力強く励ましてもらった事に気が付き、
好子は紳士クンの人柄の良さに、改めて親しみを深めたのであった。
なので肩をすくめて苦笑いしながら、こう続けた。
「蓋垣さんのお悩みを聞くつもりが、私の方が悩みを聞いてもらっちゃって、
何だかあべこべですね」
「アハハ、僕も何か困った事があれば、委員長さんに相談するよ。
あと、僕の事は乙子でいいからね」
「わかりました、乙子さん」
紳士クンの言葉に好子はそう言ってほほ笑み、紳士クンもニッコリと笑みを返す。
こうして紳士クンと好子は、今までよりも少し仲良しになり、
たわいもないおしゃべりを続けながら、目的の駅までのひと時を過ごした。




