6 相談に乗るつもりがいつの間にか乗られている
「あ、いや、実は夕べ、
お姉ちゃんに借りた少女漫画を読んでたらついつい夜更かししちゃって、
寝不足気味なんだ。そのせいで、今朝はちょっと寝坊しちゃったしね」
「まぁ、蓋垣さんでもそんな事があるんですね。
でも、私もハーレクイーンの恋愛小説が大好きで、
勉強の合間に少しだけ読むつもりが、
ついつい寝る時間まで夢中になって読んじゃう事がよくあります」
「委員長さん、あ、いや、日都さんでもそういう事があるんだね」
「委員長で構いませんよ。皆にもそう呼ばれていますし」
「そう?でも、ちょっと意外だよ。
委員長さんは学園だけじゃなく、家でもキッチリ真面目な生活を送っていそうだから」
紳士クンが冗談めかしてそう言うと、
好子は全力で首と両手をブンブン横に振ってこう返す。
「とんでもないです!
家での私は本当にグータラで、学園ではそういう部分を出してはいけないと思い、
余計に気を張っているだけなんです!」
「そうなんだ?まぁ確かに委員長さんは、
いつもクラスの皆の為に凄く頑張ってくれてるもんね。
だから皆もとても助かっているし、委員長さんの事を頼りにしてる。
まぁ、逆に頼りすぎちゃう所もあるかも知れないけどね」
「そう、でしょうか。でも・・・・・・」
と、好子は一転して表情を曇らせ、両手で持っていた学生鞄の持ち手の所を、
両親指の腹でさすりながらこう続けた。
「いつも、不安になるんです。
私、菫組の委員長として、本当にちゃんとやれているのかなって。
クラスの皆はいい人ばかりだから、
私なんかでも委員長として受け入れてくれていますけど、
正直、蓋垣さんの方が優しくて、包容力があって、
それでいて芯は凄くしっかりしていて、凄木令奈さんのように、
その、ちょっと怖い感じの人にでも、物怖じする事なくビシッと言えるし、
だから、私よりも、ずっと委員長として相応しいんじゃないかと、
そう思えてならないんです・・・・・・」
「えっ!」
好子の言葉に、紳士クンは心底驚いて思わず声を上げた。
今まで挨拶程度の会話しかしてこなかったので、
まさか好子が自分の事をそんな風に思っていたとは全く知らなかったし、
ましてや自分の方が好子よりも委員長に相応しい等とは、思いもよらない事だった。
なので紳士クンは声を荒げるように言葉を返す。
「そんな事ないよ!優しさも包容力も、委員長さんの方が断然あるし、
令奈さんの一件(第三巻第一話参照)にしても、
僕はついカッとしてあんな感じになっちゃったけど、
もし委員長さんなら、もっと温和に、丸く治められたと思うし、
何より委員長さんは委員長として立派に役目を果たしているんだから、
僕の方が委員長に相応しいなんて事は絶対にないよ!絶対に!」




