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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅴ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと、日曜日の決闘
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29 紳士クンの説教部屋

 「なるほど、僕の知らない所で、そんな話になっていたんだね」

 乱闘終結から約十分後、

伴兆太郎と令太からそれぞれ事の成り行きを聞いた紳士クンは、

腕組みをしながらそう言った。

その正面には両手は解放されたものの、

バツの悪さでナメクジのように縮こまっている伴兆太郎と令太が正座をし、

その後ろに、莉伊汰と郁子を先頭に、

メイド達と烈怒刃威悪憐主のメンバー達も正座をして、

まるでこの集団のボスが、紳士クンのような絵面(えづら)になっていた。

莉伊汰と郁子は令太と伴兆太郎の指示で動いただけだが、

乱闘の引き金を引いたのは自分達なので、

それなりに負い目を感じているようだった。

そんな中紳士クンは、カッと目を見開いて声を荒げた。

 「ダメじゃないか!

二人で喧嘩するならまだしも、これだけ大勢の人を巻き込んで喧嘩して、

怪我人も沢山出して、一体何考えてるんだよ⁉」

 「そ、それは・・・・・・」

 「返す言葉も、ねぇよ・・・・・・」

 伴兆太郎と令太も流石に反省した様子で、視線を地面に落とす。

しかし紳士クンはまだ怒りが治まらない様子でソッポを向いてこう続ける。

 「僕が原因でこんな事になるなら、僕は二人と絶交するよ!

もう金輪際(こんりんざい)口も利かないからね!」

 「なっ⁉」

 「それはあんまりじゃねぇか⁉」

 紳士クンの言葉に露骨にうろたえる伴兆太郎と令太。

そしてそんな二人の様子を背後から眺めながら、

郁子と莉伊汰はそれぞれこんな事を思っていた。

 (無敗の喧嘩番長で通っている伴兆太郎があんなに取り乱すなんて、

あの蓋垣って子は相当マブイ(スケ)

(※女性として非常に魅力的である。みたいな意味)なんだねぇ)

 (ひねくれ者で誰にも心を許す事がないと思っていた令太ぼっちゃんが、

令お嬢様以外の人間にあんな風にひれ伏すなんて、

蓋垣さんが男性であれ女性であれ、

令太ぼっちゃんは心底惚れちゃってるんだろうなぁ)



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