22 紳士クン!行きます!
「あ、いえいえ、全然気にしてないですよ。それよりどうしたんです?
もしかして、令太君に何かあったんですか?」
するとセバスチャン、いや、世場守千庵はコクリと頷き、
一刻の猶予もならないという様子でこう言った。
「はい、実は令太ぼっちゃんが、
紅い服を着た暴走族の集団にさらわれてしまったのです」
「えっ⁉令太君が暴走族にさらわれちゃったんですか⁉
どうしてそんな事に⁉」
紳士クンが目をひんむいてそう言うと、
世場守千庵は声をにわかに震わせながらこう続けた。
「わたくしにもわかりません。
が、ぼっちゃまには何か心当たりがある御様子で、
この事は口外無用だと言い残し、その暴走族のバイクで連れ去られて行きました。
ですがわたくしとしましてはぼっちゃんが心配でならず、
とにかくこの事を蓋垣様にだけでもお知らせしようと、
こうして馳せ参じた次第なのでございます」
「そう、なんですか。ちなみに、令太君が何処に連れ去られたのかはわかりますか?」
「はい、令太ぼっちゃんの位置は携帯のGPSで把握できております。
どうやらぼっちゃんは、街外れの工業団地に連れていかれたようです。
おそらくそこに、その暴走族のアジトのようなものがあるのでしょう」
「わかりました!僕も今からそこに行きたいので、
すみませんが僕をその近くに連れて行っていただけませんか⁉」
「それは構いませんが、行ってどうなさるおつもりですか?」
「もちろん、令太君を助けます!
僕が行ってどうこうできるかは分からないけど、
とにかくここは僕が行かなきゃいけない気がするんです!」
紳士クンの鬼気迫る眼差しと言葉に、世場守千庵は気圧されながら
「わ、わかり、ました」
と言い、それが言い終わらないうちに紳士クンは家の二階に居る撫子に、
「お姉ちゃん!ちょっと令太君を迎えに行って来るよ!」
と声をかけ、
「気を付けるのよ」
との返事を聞くなり、再び世場守千庵の方に向き直ってこう言った。
「それでは世場守さん!行きましょう!」
かくして紳士クンは世場守千庵の運転する黒のリムジンに乗り込み、
携帯のGPSを辿り、令太達の居る廃倉庫へと向かったのであった。




