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21 実は第一話のあの人
と、家のチャイムが鳴り、それと同時に紳士クンは
「来た!」
と声を上げ、一目散に部屋を出て玄関に向かった。
そしてドアホンも取らずにそのままドアを開ける。
すると門の前に立っていたのは凄木令太でもなく伴兆太郎でもなくて、
上品な黒のスーツを身にまとった、白髪の温厚そうな老紳士だった。
予想していたのとはおよそ違う人物の登場に、紳士クンは目を丸くして
「あれ?え、と、どちら様、ですか?」
と言うのが精一杯だった。
すると老紳士はペコリと頭を下げ、切羽詰まった声でこう切り出した。
「突然の訪問、申し訳ありません。
わたくしは凄木家で執事を務める、世場守千庵と申します。
その節は大変なご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
「え?その節?」
その節がどの節だかピンとこなかった紳士クンは一瞬頭をひねったが、
入学式の日に車に水溜りの水をかけられた際、
その車を運転していたのがこの世場守千庵だったという事を思い出し、
(※第一巻第一話参照)
両手をブンブン横に振って言った。




