16 族の御到着
「莉伊汰様!」
という、一人のメイドのよく通る声が響き、
あと一瞬で眠りに堕ちる所だった伴兆太郎の意識が一気に元に戻った。
目の前では、栗色の豊かな髪をポニーテールにした、
長身のメイドが莉伊汰の傍らに駆け寄っていて、
どうやら今の声の主はこのメイドのものらしい事が分かった。
そして莉伊汰は伴兆太郎の肩を押さえたままそのメイドの方に振り返り、
一転して真面目な口調になって問いかけた。
「千陽さん、どうしました?」
千陽と呼ばれた凄木家のメイド長を務める芽衣渡千陽は、
落ち着き払った物腰ながら、その表情にかすかな緊迫感を漂わせてこう返す。
「倉庫の外に、何やら暴走族のような格好をした、
バイクの集団が集まっています。
全員女性のようですが、金属バットや木刀等の凶器を持っていて、
その数はおよそ二十名は居るかと思われます」
「ありゃ?ここってもしかして、その暴走族のアジトだったのかな?
それはちょっと調査不足だったなぁ。
何とか交渉して、夕方まで貸してもらえないかなぁ」
頭をかきながら呑気な口調でそう言った莉伊汰に、千陽は声を潜めてこう続ける。
「それともうひとつ、重大な問題があります」
「ほう、それは何です?」
「その暴走族に、令太・・・・・・
いえ、令奈お嬢様が、捕らわれています」
「何ですと?」




