14 おもてなしの準備
さて、場所は再び紳士クンの住む街の外れにある廃倉庫。
凄木家の執事である瀬野莉伊汰率いる、
メイド達に捕えられてここにやって来た伴兆太郎は、
両手を後ろで縛られた状態で錆びた一斗缶に座らされ、
それを見下す莉伊汰を睨みつけていたが、
ずっとこうしているのにもいい加減嫌気がさして来たので、
さっきから気になっている事を莉伊汰に尋ねた。
「おい」
「はい、何でしょう?」
まるで客人をもてなす時のような愛想のいい笑顔を浮かべて莉伊汰がそう返すと、
伴兆太郎はその莉伊汰の背後で忙しそうに立ちまわっているメイド達を、
アゴで示しながらこう尋ねた。
「あいつら、こんな時にこんな所で、一体何やってんだよ?」
ちなみにそのメイド達は今、鼻と口を白のスカーフで覆い、
両手には肘まである掃除用手袋を嵌め、
ある者は砂とホコリに覆われた地面をホウキで掃き、
ある者は煤のような汚れにまみれた窓を雑巾で拭き、
またある者は倉庫の端に無造作に放置されたガラクタを綺麗に拭いて整頓したりと、
まあ要するに、メイド達は総出で、この倉庫の大掃除に勤しんでいるのであった。
その様子を呆れた表情で眺めている伴兆太郎に、
莉伊汰はさも当然というような口調でこう返す。
「見ての通り、この倉庫を綺麗にしているのです。
凄木家のメイドたる者、お客様をいかなる場所にご案内しても、
そこで快適に過ごしていただけるよう、
最大限の配慮とご奉仕をしなければなりません。
なので彼女達は今、伴兆太郎様に快適にここで過ごしていただけるよう、
せっせと掃除に勤しんでいるのです」
「ハッ!俺がお客様だと?その割には扱いがまるで犯罪者みてぇだけどな」
「あなたが夕方までここで大人しくしていてくださる限り、
僕らはあなたのどんな要望にもお応えするつもりですよ。
豪華な食事が食べたいというのならすぐに手配しますし、
何かゲームでもしたければすぐに用意します。
あ、お望みならばメイド達に足のマッサージでもさせましょうか?
なかなか気持ちがいいものですよ?」
「いらねぇよ!俺の要望はただひとつ、今すぐここから解放しろ!」




