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5 連れて来られた先は
――――――そして伴兆太郎はそのまま車に乗せられ、
そこから十分ほど走った後、目的地に着いた所で車から降ろされて、
何かの建物に入った。
そこで再び目隠しが取られると、伴兆太郎の目に、
さっきとはまるで違う光景が飛び込んで来た。
そこは紳士クンの住む街の外れにある工業団地の、今は使われていない廃倉庫で、
フットサルが出来るほどのスペースの端に、
錆び果てた鉄パイプ等の廃材が積み上げられ、
周りは赤茶けた汚れにまみれたトタン素材の壁に囲まれ、
煤のような膜に覆われた窓からはわずかな陽の光しか差し込まず、
倉庫の中は昼間にもかかわらず薄暗かった。
そこで伴兆太郎の前に、メイド達を従えて立ちはだかった莉伊汰は、
さっきと変わらぬ不敵な笑みを浮かべ、伴兆太郎に言った。
「安心してください、夕方になれば解放して差し上げますので、
それまではここで大人しくしていてもらいます。
あ、何か飲み物でも買って来ましょうか?僕、奢りますよ」
それに対して伴兆太郎は、ぶっきら棒にこう言った。
「いらねぇよ」




