4 精鋭揃いのメイド隊
そう言って莉伊汰が軽く右手を上げると、
周囲の路地や電柱の影や家の塀の上から、
メイド服に身を包んだ凄木家のメイド達が現れ、
まるで軍隊のような素早さと手際の良さで、
あっという間に伴兆太郎の周囲を取り囲んだ。
その数ざっと二十名。
そして各々が両手にさすまた(・・・・)を持ち、その先を伴兆太郎に差し向けている。
おまけにそのメイド達は令奈が武闘派と言っただけあり、
四肢と体躯は強靭に鍛え上げられ、武道の心得もあるらしく、
その構えに一分の隙もない。
一人一人を相手にすれば何とか退けられそうだが、
これだけの人数を相手にするとなると、流石の伴兆太郎も、
この前の不良共の時のようにはいきそうになかった。
(あの女、どうあっても俺を蓋垣の家に行かせねぇつもりだな。
ここは素直に捕まって、後で隙を見て逃げ出す方が得策か)
そう考えた伴兆太郎はひとつ息をつき、両手を上げて言った。
「わかった、好きにしろよ」
すると莉伊汰が一人のメイドに合図を送り、
それを受けたそのメイドはさすまた(・・・・)をその場に置いて伴兆太郎の背後に歩み寄り、
黒地のバンダナを伴兆太郎の目元に巻きつけて目隠しをし、
両腕を後ろに回させ、それを麻縄で固く縛り上げた。
視界は完全に遮られ、縄も相当固く縛り上げられているらしく、
怪力の伴兆太郎の腕力を以てしても、容易にほどけそうにはない。
そんな中、不敵な笑みが想像できるような声色で、莉伊汰はこう言った。
「それでは、行きましょうか」




