33 静香の決意
「ダメよ!いきなりそんなに大勢で押し掛けたら、
撫子さんや乙子さんに迷惑じゃない!
それにお兄ちゃんは、撫子さんにキッパリ振られたんでしょう?
いい加減に諦めないと、ストーカー扱いされちゃうよ?」
静香も負けじと声を荒げてそう言ったが、色雄はひるむ事なく言い返す。
「ストーカーだなんてとんでもない!
俺の撫子さんに対する想いは純粋で一途な本物の愛情なんだ!
だからどれだけつれなくされようとも、俺は絶対に諦めない!
いや、むしろつれなくされればされる程、
俺の撫子さんに対する想いは燃え上がるというものだ!」
「とにかくもう出てって!
明日は絶対に撫子さんの家に勝手に押し掛けたりしたらダメよ⁉
そんな事したら兄妹の縁を切るからね!」
静香はそう叫ぶと、立ち上がって色雄を強引に部屋から追い出しにかかった。
それに対して色雄は
「お、おい、それはあんまりにも冷たいじゃないか⁉
お前も俺の恋路の応援をしてくれよ!なぁ!」
と叫びながら抵抗したが、腕力では静香の方に分があるので、
色雄は難なく追い出され、乱暴に部屋の扉を閉められてしまった。
そして色雄がようやっと諦めて自分の部屋に戻って行く足音を聞いた静香は、
ホッと息をついて天井を見上げた。
(乙子さん、うちのおバカなお兄ちゃんは何とか私が食い止めます。
だから明日は頑張ってください)
様々な人物の思惑や心配が交錯する中、
土曜日の夜は、徐々に更けていくのだった。




