30 同じ女なら、少々手荒な真似をしても問題はない説
「で、頼みってのは何だい?潰したい不良集団でもあるのかい?」
それに対して伴兆太郎は首を横に振り、右手の人差指を立ててこう言った。
「いや違う。実は明日、ある女子生徒を一人さらって、
何処か適当な場所に夕方まで閉じ込めてもらいてぇんだ」
それを聞いた郁子は右の眉をはね上げ、興味深げに尋ねる。
「そりゃあ造作もない事だけど、それはあんたがホの字の女なのかい?」
「違う!俺が想いを寄せる相手は他に居る!
・・・・・・で、明日、その相手の家に行く事になったんだが、
その女も一緒に来る事になっててよ、そいつは同じ女でありながら、
俺の片想いの相手にイヤラシイ欲望を抱き、
あわよくばテゴメにしようと目論んでいる危ねぇ女なんだ。
俺はその女から片想いの相手を守る為、
何としてもそいつを明日、何処かに閉じ込めておきてぇんだよ」
「なるほど、そういう事ならお安い御用だ。
だけど、女一人さらうのに何でアタイらを駆り出すんだい?
あんたはエシオニア学園の男子部で番長を張ってんだろ?
それくらい一人でもできそうなモンだけどね。
どうせなら、もっとおっきな喧嘩の加勢とかで借りを返したいんだけど」
「俺は別に番長なんか張ってねぇよ。周りが勝手にそう言ってるだけだ。
それにでっかい喧嘩をこっちから吹っ掛けるつもりもねぇし。
それより、俺が何とかして欲しいその女は、
性格も言動も男みてぇにガサツで凶悪な奴で、喧嘩の腕もそこそこ立ちやがる。
俺もタイマンを張れば、手加減なしでいかねぇと危ねぇかもしれねぇ。
が、相手はどれだけ凶暴でも一応は女(※の、姿をした男です)。
本気で拳を振るうには気が引けてな。
そこで、同じ女であいつに勝っても劣らねぇ腕っ節のあんたに、
この要件を頼みたい訳だ」
「なるほどなるほど、
同じ女なら少々手荒な真似をしても問題ねぇもんな(※問題はあります)。
しかしあんたがそんなに警戒するってのは、なかなかに手ごわい相手なんだねぇ。
そいつもあんたと同じエシオニア学園の生徒なのかい?」
「そうだ。奴の名前は凄木令奈。エシオニア学園女子部の一年の生徒だ」




