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29 リーダーは借りを返したい
「すまねぇな、こんな時間にこんな所に呼び出して。
実は折り入って、あんたに頼みたい事があるんだ」
それに対して郁子は不敵な笑みを浮かべ、
右手に持った金属バットを肩に担いでこう返す。
「それはおあつらえ向きだね。この前の借りを返すいい機会だ。
アタイは借りたモンはできるだけ早く返したい性質なんでね」
ちなみにこの前の借りとは、数日前、
郁子が烈怒刃威悪憐主の集会に一人で向かっている途中、
別の縄張りのレディース暴走族である
『羽阿腐瑠泥悶』のメンバー十人ほどに待ち伏せされて取り囲まれ、
絶体絶命のピンチに陥ってしまった時、
たまたまそこに通りかかった伴兆太郎が助太刀に入って何とか撃退し、
事なきを得たというものである。
その恩を一日でも早く返したいと願っていた義理がたい性格の郁子は、
急かすように伴兆太郎に聞き返す。




