27 令太の『デレ』
令太が両手を合わせてそう言うと、
莉伊汰は肺の空気が全部抜けるかと思われる程に深いため息をつき、
頭をポリポリかきながら言った。
「まったく、しょうがないですねぇ。
その代わり、休日手当ははずんでくださいよ?
あと、この作戦を実行するにあたって、ひとつ条件があります」
「条件?一体どんな条件だよ?」
令太が眉を潜めて尋ねると、
莉伊汰は獲物を罠にはめる詐欺師のような笑みを浮かべ、
令太にグッと顔を近づけ、声を潜めてこう言った。
「令太ぼっちゃんの、蓋垣君に対する本当のお気持ちを教えてください。
あなたの心の底に潜む、本当のお気持ちってやつを」
「なっ、だから、あいつは俺の、友達だって、言ってんだろっ」
令太は露骨にうろたえながらそう答えたが、
莉伊汰は更に令太に顔を近づけて言った。
「それは今のぼっちゃんと蓋垣君の関係性の話で、
ぼっちゃんの『お気持ち』ではないでしょう?
僕はぼっちゃんが蓋垣君にどういう気持ちを抱いているのか、それを知りたいのです。
それを教えて下さらないのなら、僕は明日の作戦に参加しませんよ?」
「ぐっ、テメェ・・・・・・・」
莉伊汰を心底憎らしげに睨みながら令太はそう呟いたが、
やがて観念したように大きく息をつき、恥じらいを隠すように目を逸らし、
何とか声を絞り出してこう言った。
「す、好き、だと、思う。
ただ、この気持ちが恋愛なのか、
友情なのか、
よく、分からねぇんだけど」
それを聞いた莉伊汰は、
日の出の太陽に照らされた海原のように瞳を輝かせ、
熟した野イチゴのように頬を赤らめ、
それでいて口元には、
赤ずきんをだまして食べようとする狼のような悪意に歪んだ笑みを浮かべて言った。
「分かりました。ぼっちゃんのお気持ちは、よぉ~く分かりました。
それでは約束通り、明日伴兆太郎を拘束し、街外れの廃工場に閉じ込めておきます。
ぼっちゃんは心おきなく、蓋垣君との愛を育んでください」
「だからそういう事じゃねぇって言ってんだろうが!」
「御意御意」
「御意は一回だ!」
こうして令太の作戦が決まり、明日、それが実行される事となった。




