26 御意は一回
それを聞いた莉伊汰は今度は目をピンポン玉の如くまん丸にし、
心底感じ入った声色で呟いた。
「ぼっちゃん、本当に蓋垣さん、否、蓋垣君の事がお好きなんですね」
そう言われた令太は瞼が避けるかと思われる程に目を大きく見開き、
茹でダコよりも顔を赤くしながら声を荒げた。
「ば、馬鹿野郎!
だから好きとかそういう事じゃねぇって言ってんだろうが!
ただあいつは、今の学園でただ一人、
俺と同じような境遇に置かれている奴だから、
何と言うか・・・・・・
とにかくほっとけねぇ奴なんだよ!
いいからつべこべ言わずに俺の言う事を聞け!」
「御意御意」
「御意は一回だ!いつも言ってんだろ!」
「御意。しかしながらぼっちゃん、あいにく僕は明日、
久し振りのお休みをいただいているので、
ぼっちゃんの考えた作戦に参加する事はできません。
なのでメイド長にはぼっちゃんの方から直接指示を出していただき、
明日の作戦を実行してください」
「なっ!そんな事できる訳ねぇだろ!
こんな人の道から外れた事をしろなんて指示を出したら、
あのメイド長にどんな大目玉をくらうか分かったモンじゃねぇ!」
「あ、人の道から外れた事を言っているという自覚はちゃんとあるんですね」
「当たり前だ!
だが今回はそれを捻じ曲げてでもやらなきゃいけねぇんだ!
なのにあのメイド長はどうも俺に対して当たりがキツイ。
それに対してお前の事は猫っ可愛がりしているから、
お前の言う事なら何でも聞くだろ。
だからこの事はお前からメイド長に話を通して、
明日は休み返上でお前もこの作戦に参加してくれ!
頼む!この通り!」




