25 悪辣すぎる凄木令太
腕組みをしてそう言った令太に、莉伊汰は小首をかしげながら尋ねる。
「ですが、どうしてメイドを使うんです?
確かにうちの武闘派のメイドは、
そこいらの悪漢を撃退する程度の戦闘力を持っていますが、
凄木家には警視庁のsp並みの能力がある、
黒スーツのボディーガードが居るでしょう?
そっちを使えばもっと確実に、伴兆太郎を取り押さえる事ができますよ?」
「黒スーツを使うには姉貴に頭を下げなきゃいけねぇだろうが。
それにあのホモ野郎は今日俺に襲いかかろうとした時、
拳じゃなくて手刀を打ち込もうとした(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。
すなわち若干の手心を加えたって訳だ。
それはつまり、あいつは猛獣みてぇにバカ強いが、
女相手だと本気で喧嘩はしねぇってこった。
男の刺客を送り込めば、
あいつは蓋垣の家に行きたい一心で死に物狂いで抵抗するだろうが、
女相手ならわずかな情け心が働いて、本気で喧嘩はできねぇはず。
そこにつけこもうって算段だ」
そう言って令太は山賊の頭領のような悪辣な笑みを浮かべ、
それを見た莉伊汰は憐みの表情を浮かべながら、
嘘泣きの涙をわざとらしく胸ポケットのハンカチで拭って言った。
「本当に、どうしようもなくひねくれておしまいになりましたね、ぼっちゃん。
小学生の頃はその見目麗しい容姿に違わず従順で清らかな心根だったのに。
どうしてこんなに人の道を踏み外した外道に堕ち込んでしまったのでしょう?
ああ、本当にお労しい・・・・・・」
「うるせぇな!俺をそんな憐れんだ目で見るな!
こんな心根になったのは姉貴のせいだ!
それにこれは蓋垣を守る為には仕方ねぇ事なんだ!
あいつを守る為なら、俺はどんな卑怯な手を使う事だって構いはしねぇよ!」




